本書に、「言語は人生を『物語化』するのに役立つ。心の中の言葉は過去を形づくり、私たちを未来へと導く物語を組み立てる」というフレーズがありますが、これは面白い気づきでした。
言語がなければ、思考もないのです。言語は、自分が感じていることや考えていることの裏側で、勝手に走っているプログラムとも言えるでしょう。
問題は、それに自覚的でなく、言葉によって物事を考えているのだということさえ、意識しなければ気づかないということです。つまり、自分の内なる声が発せられていても、気づいていないのです。
自覚なくネガティブ思考に乗っ取られている
頭の中のおしゃべりは、本書では、比較的ニュートラルなものとして描かれています。
「内省」という言葉で表現されていますが、それそのものは決して悪いことではありません。クリエイティブなことや、深い思考は、内省を深めていくことでもあります。
では、どこで悪いものになってしまうのかというと、ネガティブなことばかりを考えて、チャッターが起きている時です。精神医学でも、ネガティブな反芻思考が、うつにつながるということが明確にわかっています。
脳には、開いた状態と、閉じた状態があります。開いた状態とは、外部の情報を五感で知覚している状態です。
マインドフルネスで、「今を感じましょう」という言葉がありますが、それは、五感を使って脳が外部からの刺激に対して開いている状態を長く保ちましょうという意味です。すると、チャッターは静かになっていきます。
逆に、チャッターが起きているのは、閉じた状態です。現実を見ているのではなく、自分の中で不安や恐れなどが増幅されてゆき、それに自分が乗っ取られてしまうのです。
しかし、自分がいま閉じた状態で、悪いチャッターに陥っていると気づくと、ドアを開けて、現実とつながることができます。
大事なことは、そのネガティブな思考に気づいているかどうかというところなのです。
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