柔軟性を欠くオフィス勤務の慣行を脱却し、より柔軟な働き方へ――場所の面だけでなく、時間の面でも柔軟性のある働き方へ――の移行を遂げる好機が訪れているのだ。
ただし、柔軟な働き方には、ある大きな副作用があることもわかってきた。それは、主に2つある。
そのひとつが、働き手がつねにネットに接続した状態になりやすいことだ。TCSのチャンドラセカランは、そのリスクを見事に表現している。
「人々は、(自宅の)コンピュータの前で常軌を逸した長い時間を過ごすようになっています。その主な理由は、会議があまりに多いことです。とても簡単にビデオ会議ができるので、どうしても会議が増えるのです」
コロナ禍により、人々がどれくらい長時間働くようになったかを浮き彫りにしているデータがある。アメリカとヨーロッパの300万人を超す人々の電子メールの送受信時間に関するデータを見ると、1日の中で業務を行う時間帯(24時間の間で最初に電子メールを送受信してから最後に送受信するまで)は、平均48.5分拡大した。その時間は、コロナ前の9時間51.5分から10時間40分へ、8.2%伸びている。勤務時間外にやり取りされる電子メールが増えたことが一因だ。
この課題にうまく対処できているかどうかは、働き方のリデザインの成否を判断する基準のひとつになるだろう。
自社の「独自性」を発揮するチャンス
もうひとつが、人的ネットワークが縮小していること。労働時間が増加している人が多いことは、大半の企業幹部たちも早い段階で認識していた。
それに対し、目に見えにくいけれど、しだいに顕著になってきたのは、在宅勤務が人々の人的ネットワークに及ぼす予想外の影響だ。
誰もが自宅で働くようになれば、同僚と対面で話したり、オフィスの給湯室で雑談したりする機会が失われる。イギリスの中央銀行であるイングランド銀行のチーフエコノミスト(当時)であるアンディ・ホールデンは、こう指摘している。
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