「外資企業では役立たず」な日本人エリートの盲点 「ヘッドハンター×大学教授」転職対談:後編
植田:そう、前向きな姿勢を維持しつつ、必要なリソースを確保する。そういった力も、前回の記事で言及した「生存能力」の一環だと思います。
年齢で自分自身を枠にはめるのは日本人の悪い癖
妹尾:一般的に外資系企業のほうが、日本企業に比べて若い人がリーダーシップをとっているイメージを持たれています。植田さんは、年齢が転職の妨げになるとお考えですか?
植田:外資系企業でも、年齢が50歳以上になっていると門戸は狭くなってしまうのは確かでしょう。ただし、アメリカ企業の場合、定年退職という制度がそもそも存在しておらず、年齢を重ねて役職が上になると、むしろ高度な結果を出すことが要求されるので、高齢者も必死で働くのが一般的です。
拙書『2040年「仕事とキャリア」年表』の中でも説明したのですが、日本企業の多くが採用している「定年制」というのは、実は終身雇用を採用し、パフォーマンスの悪い人でもなかなか首を切れない日本企業における「強制的な解雇システム」だということを認識している人は少ないように感じます。
そもそも日本の企業の慣習は旧日本軍の規定が大きく影響しているといわれています。軍隊では体力が要求されるので、階級ごとに一定年齢を超えると退役させるという仕組みがとられていました。
昭和の時代の日本企業も体力を必要とする工場労働者が多かったことから、軍隊の定年制を模倣するところが増え、退職後の生活を保障するために退職金を支給するという慣行ができあがったのです。
日本企業の多くが採用しているメンバーシップ型の雇用制度の下では、いったん雇用すると年功で昇進し、給料も上がっていきます。しかし、社員が高齢になれば、平均的に見ると知力も体力も衰え始めます。にもかかわらず高い給与を支払い続けなくてはいけないとなると、会社の経営は圧迫されてしまいます。
こうした不都合な現実を解消する手段としてでき上がったのが、定年制なのです。
妹尾:年齢と仕事の能力などを関連づける傾向が強いのは、他の国(特に欧米諸国)には見られない日本独自の特徴だというのは、以前から感じていました。軍隊の制度の影響も強く受けてきたのですね。