今年は「サケ漁」好調でも全盛期の半分以下の背景 沿岸部の海水温上昇で死滅する稚魚が増加

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放流に適している海水温の時期を見計らって集中的に放流するなどの技術・方法論に加えて、多少の海洋環境の変動(海水温や潮流、エサの状況など)に対応できる強い稚魚をつくることが重要だというわけだ。その稚魚づくりのポイントについて、内水面水産試験場の担当者に詳しく聞いてみた。

「これまでの実証試験で魚油を加えたDHA含有の飼料を与えて育てた稚魚は飢餓耐性や遊泳力が強化されるということが分かってきています。厳しい環境下でも生き残る確率が高くなるわけです。同時に良質卵の確保も欠かせません。これまでは各地のふ化場がギリギリの状況でやってきましたが、そうした努力だけでは限界があり、老朽化した施設の改善や、十分な量の親魚を獲ることで良質卵を少しでも多く確保することが前提になります」(担当者)

資源回復に向けた地道な取り組みは始まったばかり。北海道におけるサケの単純回帰率は漁獲量がピークだった2003年は6.0%だったが、2021年は2.0%まで落ち込んでいる(国立研究開発法人水産研究・教育機構のデータ)。

目に見える形で成果が期待できるのは、早くて数年後、実際にはもっと先になる可能性もある。当面は試行錯誤が続くだろうが、サケの資源回復に向けた取り組みは、単なる食料確保の面だけでなく北海道が育んできたサケ文化を後世につなげていくためにも不可欠なものである。

もちろん、これはサケだけの話ではない。貴重な水産資源をいかに回復させ、次の世代に残していくのか。都道府県単位の事業ではないはず。国のさらなる積極的な資源管理・回復対策や予算拡充が必要だろう。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログでは、最新の病状などを掲載中。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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