今年は「サケ漁」好調でも全盛期の半分以下の背景 沿岸部の海水温上昇で死滅する稚魚が増加
サケの一生を簡単にたどってみよう。早春、川を下ったサケ(あるいは放流されたサケ)は海に出て沿岸部をぐるっと回ってオホーツク海に出て、ベーリング海で成長(アラスカ湾で越冬)。早いものは3年後に、多くは4年後に生まれた川に戻ってくる。
その出発点の沿岸部の海水温が高くなり、オホーツク海に出るまでに死滅する稚魚が増えている。それが回遊数の減少、不漁につながっているという説が有力だ。このほか、産卵場所となる川の荒廃説やロシアによる先獲り説も一部で指摘されている。
つまりサケの資源回復には、サケの一生のサイクルが以前のように順調に循環するように環境整備などをしなければならないということだ。
資源回復に向けて強い稚魚を育成
海洋環境の変動は今後も続く。昨年は道東沿岸部に大規模な赤潮が発生し、大量のサケやウニが死滅するといった事態まで引き起こしている。そうしたなかで、サケの資源回復に向けた取り組みが続いている。
北海道は2019年6月に有識者からなる「秋サケ資源対策協議会」を設置し、翌年2月に協議会の結果概要を公表した。秋サケ資源対策の概要によると、対策として①沿岸海況の把握強化による的確な適期推定に基づく集中放流、十分な親魚確保に向けた漁場設定や捕獲計画の見直し検討などの資源造成策 ②水温予測の研究、来遊予測の向上、耳石標識放流調査の拡充などの調査研究等の推進 ③沿岸海況モニタリングの強化、親魚の十分な捕獲と洗卵等の防疫対策強化による良質卵の確保、遊泳力等を強化するDHA高含有飼料の給餌などの民間ふ化放流事業の改善を挙げている。
この方針を受けて、道は、令和3年度に5346万円、4年度に5158万円の事業費を予算計上し、①稚魚の遊泳力強化、②施設整備支援、③沿岸水温監視といった事業に取り組んでいる。注目は①の強い稚魚づくりである。具体的にはどんなことを行っているのか。
「道から各管内のさけ・ます増殖事業協会(9地区)へ油脂添加飼料を給餌した稚魚放流を委託しており、各地区で概ね7日間、油脂添加飼料を給餌し、放流に適した体重となるまで飼育した後、放流することにより、稚魚の遊泳力や飢餓耐性が強化されます」(北海道水産林務部水産局漁業管理課サケマス係)
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