今年は「サケ漁」好調でも全盛期の半分以下の背景 沿岸部の海水温上昇で死滅する稚魚が増加
秋の味覚を楽しむ時季を迎え、北海道からうれしいニュースが届いた。ハイシーズンを迎えている秋サケ(秋に北海道に戻ってくる白サケ)の漁獲量が昨年を大幅に上回っているのだ。
「秋さけ沿岸漁獲速報」(北海道連合海区漁業調整委員会調べ)の最新情報(10月10日時点)によると、道内の漁獲総尾数は2052万4243尾で、不漁に泣いた昨年の1.5倍の水準に達している。だが、水産関係者の反応は冷静だった。なぜか。北海道のサケ資源を巡る近況を取材した。
まずは今年の状況から見てみよう。7月、地方独立行政法人のさけます・内水面水産試験場(以下=内水面水産試験場)は、道内全体の今年の秋サケの来遊予測を昨年比10%増の2052万尾と公表していた。2019年以降、秋サケの漁獲量が2000万尾を割り込んでいたことから、2000万尾超えの予想は朗報だった。
9月に入り、いよいよ秋サケ漁がスタートしたのだが、出だしから先行きが不安視される状況が続いた。9月上旬の漁獲量は約140万尾で前年同期比79%の水準。中旬も約447万尾で同91%と、なかなか上向かない。それが9月下旬になって、約1200万尾と倍増。量は118.9%、金額も121%とようやく前年同期を上回った。
そして10月上旬、一気に2000万尾を突破した。奇しくも内水面水産試験場の今季全体の予測値と同じ2052万尾に早々と達したのである。漁獲量は昨年同期比で152.5%、金額も480億円と、既に昨年全体の449億円を上回った。過去5年間をみても最高の数値を記録している。
今季の最終的な漁獲量見通し、想定外の「好漁」となった要因について、内水面水産試験場の担当者に聞いてみた。
「漁獲の盛期が後半になってきていて10月になってからグンと伸びました。このままいくと最終的には2500万尾ほどになると思われます。予想を超える来遊数となった理由としては、まず環境面が考えられます。稚魚を放流した時期(4年魚は2019年春)の海水温など沿岸部の環境、移動中の海洋環境などですね。これらを詳しく解析していきます。さらに、稚魚の育成・放流に携わった人々の努力が実を結んだという面もあります」(さけます資源部の担当者)
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