葛西:そこで、我々は企業が応援して作る学校なので、企業でなければできない仕組みを考えようということになり、生徒20人に1人ずつ、民間企業から派遣された社員を1年間、日夜一緒に学生寮(ハウス)に住まわせる仕組みをつくりました。これを「フロアマスター制度」と呼んでいます。
これは企業にとってはいわゆる管理者教育の一環になります。若手の男性、独身の総合職社員を入れて、20人の子どもたちを管理する。そうすると彼は、20人を束ねる管理者としての素養ができるわけです。人間をどう扱うかという、いちばん原始的なところがわかる。大人の部下20人を束ねるより、子ども20人を束ねるほうがずっと難しいですから。
子どもたちにとっては、日々面倒を見てくれる人がいて、相談する相手がいる。いろいろなトラブルがあってもそれを早めに、もう少し大人の目で見て調整してくれるわけです。家庭で行われているようなことが、学校でも行われる。会社にとってもプラスだし、親にとっても安心です。
ひとつのハウスには、60人おります。4階建ての建物があり、1階がパブリックスペース、全員が共有する空間です。そこに寮監であるハウスマスターがおります。そして2階、3階、4階に20人ずつ、それぞれ個室が与えられて子どもたちが住んでいる。その片隅にフロアマスターの部屋があり、一緒に寝起きするわけです。
毎日、1日の日記を書かせるのですが、それをひとりずつにとじておく。フロアマスターは、子どもたちが学校に行っている間にそれを読み、返事を書くわけです。子どもたちの気持ちの変化は時系列でわかる。海陽学園は開校からすでに9年がたち、卒業生も出ております。今ではこの仕組みは安定しました。
日本では軍隊的なものに忌避反応
山折:男子の全寮制といえば自衛隊とか、昔の海兵とか、あるいはアナポリスとか、そういう軍隊的な世界に通じていきます。日本では、これに対する忌避反応があって、軍隊から知恵を借りるということを、表向きしてこなかったんですね。しかし、ひと皮むけば日航や全日空などのパイロットも昔の飛行機乗りですから、民間といえども軍隊的な規律は、どこかの面で継承されているということですよね。
葛西:日本では旧軍隊的なものに対して、あるいは集団的な寮生活に対してネガティブな印象が強かった。でも、我々はとにかく中学、高校の子どもたちをきちんとケアするということで、フロアマスターという仕組みを入れて、それが成功したということです。
※ 中編は3月19日(木)に掲載します。
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