葛西:中高の6年間だと、6年の年齢差がある人間同士が付き合うということになるわけです。これは非常に大きい。
小渕内閣の時代に「教育改革国民会議」が発足した際、私は日本経済調査協議会というところで、教育問題を提言するグループに入りました。出席者は20~30人いたのですが、まさに20~30通りの別々の教育論がある。各人各様の生活体験の中から出てきており、思いつき的なものも多い。それを聞いているうちに、これをまとめてひとつの政策にするということは不可能だと考えました。
私がそのときに思ったのは、ごく少数の同じ考えを持っている人たちが中心になってモデルを作り、100人でもいいから、そうした教育をした人間を育てていくというプロセスが必要だということです。もし、その教育がよければほかにも真似してくれる人が出てくるだろう、と。そこで中高一貫、全寮制、男子校というコンセプトで学校の設立を考え始めました。
プレッシャーに抗耐性のある人間を
小学校から始めるのが本当はいちばんいいのですが、小学生だと母親が子どもを手放す可能性も少ない。ちょうどイギリスのパブリックスクールが、日本の中学生と同じぐらいの年頃の子を教育しているんですね。それで始めたのです。
学校と塾と、両方に行かなければいけないという今の体制の中ではなく、学校で集中的に勉強をして、余った時間は自分で本を読むなり、あるいは友達とスポーツするなりしてもらおうと考えました。それによって、より強い、いろいろなプレッシャーに対して抗耐性のある人間を作っていくわけです。
ところが、全寮制は簡単ではない。何が難しいかというと、寮における生活管理というのをきちんとやる人が必要なのです。イギリスのイートン校は600年ぐらいの歴史があります。その歴史の中で先輩が後輩の面倒を見るというパターンができあがっている。
山折:日本では、そうした伝統は途切れてしまっていますね。
葛西:日本の場合、ゼロから始める必要があります。先輩がいないわけですから。しかも全寮制の学校、女子校でも男子校でも世界を眺めると、だいたい宗教と結びついているところが多い。修道女や修道士が、いわば無料でいろいろなことを教えてくれるわけです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら