旧統一教会に質問権行使で「河野氏」存在感増す訳 岸田首相にとっては「引くも地獄、進むも地獄」

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岸田首相と河野消費者担当相
旧統一教会への調査を指示した岸田文雄首相と消費者庁の有識者検討会を設置した河野太郎消費者担当相(左写真:JMPA代表撮影、右写真:尾形文繁)

秋の臨時国会で初めて衆議院予算委員会が開かれる10月17日の朝、岸田文雄首相は永岡桂子文部科学相と会談し、旧統一教会に対して宗教法人法に基づく調査に踏み切るように指示した。調査は結果次第で、旧統一教会から宗教法人格を剥奪する「解散命令」の請求につながるものだ。

解散命令には「信教の自由」の観点などから慎重姿勢を崩さなかった岸田首相が、なぜ急遽方針を転換したのか。河野太郎消費者担当相が立ち上げた、旧統一教会問題をめぐる有識者検討会のメンバーはこう胸を張る。

「この日に提出された検討会の報告書を受けて、岸田首相は解散命令請求に向けて踏み出すしか選択肢がなくなったのだろう。今回は河野さんが、首相を動かした」

河野太郎消費者担当相は、旧統一教会問題でどのように動いたのか。去年の自民党総裁選における岸田首相の最大のライバル・河野氏の巧みな戦略を追った。

電光石火の動きを見せた河野氏

8月12日、河野氏は大臣就任後初めて開いた記者会見で、消費者庁に旧統一教会問題をめぐる検討会の設置を宣言した。内閣改造から2日、岸田首相からの指示もないままの電光石火の動きだった。デジタル相として抜擢された河野氏にとって兼務となった消費者担当は、いわば“おまけ”のような役職だったが、河野氏の動きは早かった。ある自民党幹部はこう語る。

「旧統一教会の問題が政権を揺るがす事態になると踏んだんだろう。国民の関心がどこにあるかを探る嗅覚は独特のものがある」

一方、岸田首相は河野氏の突破力を買いつつも、独断専行の行動にはかねて懸念も持っていた。検討会立ち上げの話を耳にした岸田首相は、周辺に「大丈夫か」と漏らしたという。

そして河野氏は、検討会の顔ぶれにこだわりを見せた。1人は、長年旧統一教会と闘ってきた紀藤正樹弁護士だ。豊富な知識のみならず、ワイドショーなどで強い発信力のある紀藤氏を抱き込むことで、世論を味方にできるという思惑があった。河野氏周辺はこのように明かす。

「消費者庁内には、『紀藤氏は消費者庁を訴えている原告団の顧問弁護士だ。検討会に入れるのはどうか』という反対意見があった。しかし河野さんは『それはそれ、これはこれ』と意に介さなかった。紀藤さんがメンバーにいる意味はとても大きい」

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