2つ借りた奨学金のうち、1つは使わないようにしていたということを聞くと、随分生活に余裕がありそうだ。おまけに家賃6万円のアパートは両親が払ってくれたというが、それでも光熱費などを考慮すると、実際に自由に使えるお金は数万円にしかならなかった。
その自由なお金をサークルで使うか、もしくはアルバイトで貯め続けるか……。とりあえず、小原さんは大学入学後にどちらもやってみた。
「サークル活動にも憧れていましたが、活動費を考えるとあまり現実的ではないということに気付かされました。友人から合宿やコンパの話を聞いてくると『お金がかかるな』と思って諦めて。
そこからは親の扶養から外れない程度のアルバイトにいそしむ生活です。コンビニの夜勤、ピザの配達などで毎月8万〜10万円ほど稼いでいました。バイトで稼いだお金の半分は生活費に消えたので、自由に使えるのは残りの4万円でした」
ストイックに過ごした大学生、新社会人生活
サークルに参加せずに、アルバイト漬けになると、大学に行く意味を見いだせずに、自然と不登校になる学生も多いと聞くが、小原さんは完全にモラトリアム期間と「就職予備校」として大学に通っていた。
「出席するだけでいい講義が多かったので、基本は寝ていました。勉強というよりも『大卒』の資格が欲しかったのがいちばんの目的だったんですよね。だから、あまり熱心に何かしらの目的意識を持って大学に通っていたわけではありませんでした。それでも、将来は情報系の企業に就職するために資格の勉強はしましたし、友達と旅行に行ったり、食べ放題のお店でたらふく飲み食いしたり、一晩中ゲームをしていたという思い出はありますよ」
無事にモラトリアム期間を終えた小原さんはその後、新卒で大手IT企業の関連会社に就職。そして、入社して半年後に奨学金の返済が始まった。
「入社当初は手取りが20万円程度で、年に2回ボーナスはあったのですが、毎月3万5000円を返済していくのは大変でしたね。光熱費や家賃などの固定費で10万円は引かれて、そこからさらに食費がかかるので、学生時代よりもストイックな生活をしていたかもしれません。
当時は1万円の買い物でも、1カ月は買うかどうかで迷っていましたね。自分の中で奨学金の返済が『枷』として残っていて、貯金額が奨学金を上回るまではもう人とつながるのも嫌なのでLINEもアンインストールしていました。だって、友達と遊んだり、恋人を作ると交際費がかかってしまうじゃないですか(笑)。
だから、社会人生活を始めてしばらくはずっと家にいました……。若かったので、遊びたくはありましたけども」
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