極端に不幸な例ばかり取り上げがちだった、これまでの奨学金報道に問題意識を感じ、新たな視座を提示している本連載。そんな筆者の思いが通じているのか、最近は奨学金を借りることに対して「未来への投資」と捉える元・奨学生から取材希望の応募が数多く届いている。
しかし、「奨学金はたくさん借りたほうがいい」と豪語する人がいる一方で、「奨学金は少し足りないぐらいがいい」と語るのが、今回話を聞いた市本康晃さん(46歳・仮名)だ。
父親「東大以外の学費は出さない」
「80年代後半、私の地元の中学校は荒れていて不良がたくさんいる状況でした。そこで、6年生のときに親に頼み込んで中学受験させてもらったんです。僕が『ダイビングやりたい』『英会話やりたい』と言ってもお金を出してくれる家庭だったので、恵まれていたほうだったと思います。妹も僕を見て受験することになり、中学から私立に通っていました」
両親は会社員と看護師で共働きで、特に貧しいというわけではなかったが、父親は学歴信仰が強く、市本さんは常に「東大以外の学費は出さない」と言われて育ったという。


















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