今では家のローンなどで、150万円の奨学金よりもはるかに大きな額を借金していますが、当時の自分にとっては一番大きな額でした。それでも、通信業界全体が伸びている時期だったので、運がよかったと思います」
なお、入社から20年以上経った今も、市本さんは同じ会社に勤務しているという。今振り返ると、
(1)東大を諦めたこと
(2)金融業界に進まなかったこと
(3)学生時代に一人暮らしをしなかったこと
この3つの決断が、彼の人生をいい方向に向かわせたわけだ。
奨学金は少し足りないぐらいがちょうどいい
だからこそ、今彼が奨学金に関して思うのは「奨学金は、少し足りないぐらいがちょうどいい」ということだという。
「奨学金を借りる申請をしていた際に『もっと金額を増やせます』と言われたのですが、その甘言に誘われずに3万円に留めた自分には『グッジョブ!』と言ってやりたいです。
私が借りた月額3万円という数字は『学費のために残しておくお金を差し引くと、生活するにはちょっと足りない。でも、講義やサークルを犠牲にするほどは働く必要はない』という微妙な金額でした。
でも、それが奨学金の返済額を少なくしてくれた。もし一人暮らしを選んでもっと借りていれば、給料を重視して将来性の不透明な業界に入らず、他のクラスメイトと同じように銀行に進んでいたかもしれず、そうなるとまったく異なる人生になっていたでしょう。
なかなか難しいことだとは思いますが、そういった返済や職業選択に関することも頭に入れたうえで、借りる金額は慎重に検討したほうがいいと思います」
常に人に「最善」と思われる選択肢を選んでこなかったからこそ、たどり着いた境地。
もちろんどんな選択が最適になるかは人それぞれであり、奨学金を借りる金額についても適正額は人それぞれだ。実際、過去には「借りられるだけ借りたほうがいい」と勧めている返済当事者も登場している。
とはいえ、もし無理して何年もかけて東大に進もうとしていたり、長時間通学を苦にして一人暮らしを選択していれば、市本さんからはこの成功体験は聞けなかったことも事実なのだろう。
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