横領問題発覚のバド協会が調査後も"沈黙"のなぜ 一連の対応について、疑問や苦言を呈する声

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実業団チームが団体戦で争うS/Jリーグ所属チーム、トリッキーパンダースの渡辺哲義代表は日本協会幹部がとる言動について「あまりに恥ずかしい」と一刀両断。「本来なら理事全員が辞めるべき。外部から有識者に入ってもらい、新しい組織に変える必要がある」と主張する。

協会内部に詳しい元幹部は、現体制には関根会長や銭谷専務理事に異を唱えられる人間がいないと力説。「同じ穴のむじなばかり。解体して、外から新しい血を入れるしかない」。やはり抜本的改革が必要と訴える。選手だけでなく、ファンの存在も無視されていると首をかしげる。

複数の関係者によれば、元職員による横領額は公表された約680万円にとどまらないとの声もある。真相も含め、記者会見などで説明がなされるべきだが、日本協会からの公式アナウンスは依然ない。

説明責任は果たされるのか。銭谷専務理事は11日、日刊スポーツの問いかけに「JOCと相談したうえで判断する」と繰り返し、さらなる質問には「僕が何か言えば、変に書くでしょ」と返答。「隠し事はせず、すべて正直に話している」と主張しつつも、辞任の意思について聞かれると「それも答えられない」と口を閉ざした。隣にいた協会関係者も、専務理事の言葉にかぶせるように「ノーコメントで」と復唱した。

問題が明るみに出た3月、銭谷専務理事は意図的に隠したわけではなかったと強調。不正を把握したのが東京五輪を控えるタイミングだったことから「選手たちを守らないといけないという思いだった」と釈明した。

あの発言から半年以上が過ぎた。選手に近い関係者は改めて主張する。「選手が競技に集中するためにも、えらい人たちは世間に恥ずかしくない形で責任を取って欲しい」。その声はいつ、協会幹部たちの耳に届くのか。

日本バドミントン協会元職員の横領をめぐる一連の流れ

19年3月 会計を担当していた当時の職員が、18年10月から約680万円を私的流用していたことが日本協会内で発覚

19年11月 当時の職員による横領について理事会で協議。東京五輪への影響を懸念して公にはせず、刑事告訴もしないと決める。現理事を含む当時の理事11人の私費で全額を補塡(ほてん)

20年6月 横領した元職員が諭旨退職

21年10月 内部告発を受けた日本オリンピック委員会(JOC)が日本協会に調査と報告を指示。その後、日本協会は内部理事を含む調査委を設置し、JOCに報告書を提出

22年3月25日 JOCからの助言を受け、日本協会は元職員による横領があったことを初めて公表。国庫補助事業に関する不正申請があったことも明らかになる

22年3月29日 JOCは日本協会に対し、中立性に配慮した第三者委員会の設置と再調査を求める文書を送付。翌30日にはスポーツ庁などとの円卓会議で日本協会への再調査要請を報告

22年4月16日 日本協会は、名取俊也氏を委員長とする弁護士3人による第三者委員会を設置。その数日後、JOCから会計の専門家を加えるようメンバーの再検討を促される

22年5月12日 日本協会は第三者委員会に、委員とサポートメンバーとして公認会計士2人を加えることを発表。委員は弁護士3人と合わせて4人になる

22年9月13日 第三者委員会による調査報告書が日本協会に届く。協会は15日にJOC、16日にはスポーツ庁と日本スポーツ振興センター(JSC)に同報告書を提出

22年9月22日 日本協会は臨時理事会を開催。第三者委員会の調査報告書を受けて対応策や処分、再発防止策などを決める。内容の公表については、協会がまとめた報告書をJOCに提出後と報道陣に説明

22年10月4日 日本協会がまとめた報告書をJOCに提出。内容は公表されない状況が続く

(奥岡幹浩)

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