ビジネス現場でこそ役に立つ「人文学」の学び直し 人気ポッドキャスト「コテンラジオ」設立者に聞く

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ファスト教養という言葉もあるが、入り口としては悪くないはず。だが「取りあえず教養として知っておこう」「ビジネスに活用しよう」で終わるのではなく、自身の考えが覆されるほど深く学ばなければもったいない。

人によって異なるが、ビジネスパーソンにお薦めの人文学は人類学、歴史、社会学などだ。いずれも面白いうえに新しい発見を得やすく、常識だと思っていた概念を壊すことができる。

面白がることから始める

義務感で学ぶ必要はないが、そもそも知的好奇心がない人は、あまりいないと思う。人文学は人間と社会を探究する学問群なので、スポーツや音楽など好きな領域から入っていけるよさがある。自身の常識と異なる領域の探究を進める、という点で言えば海外旅行やボランティア、普段話さない人との会話でもよい。取り組みやすく、興味のある領域から入り、学びを面白がるところから始めたい。

──お薦めの勉強法は。

私は活字を読んで頭に入れるタイプなので、番組の配信のために1つのエピソードにつき100冊以上の本に目を通して台本を作る。勉強法は人それぞれ。COTEN RADIOを、ウォーキング中や運転中に「ながら聴き」している経営者も多い。事前に旅先の歴史や文化について学んだり、滞在中に現地の暮らしや文化を感じたりするのも立派な学びだ。

COTEN RADIOとは?
「歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)」は、日本のApple Podcast「総合」カテゴリーで1位を獲得するなど人気の高いインターネット音声配信番組。主に深井氏ら3人がパーソナリティーを務め、軽快なトークで日本や世界の歴史をひもといていく。
吉田松陰や諸葛孔明などの人物、もしくは宗教改革や第1次世界大戦といったテーマごとにエピソードを分け、さまざまな角度から1エピソード当たり十数話を配信する。本編、番外編、特別編などがあり、配信数は約400話(9月末現在)となる。
番組は高度な内容も少なくないが、「難しいまま受け取ってもらうのが重要」(深井氏)だとして、ポリシーを貫くために広告やスポンサーはあえてつけていない。ビジネスパーソンからの支持が高く、「聴取を通して物の見方や人生観が変わった」などの声が寄せられている。
一方、COTENは世界史を独自に整理したデータベースの構築を目標としている。これは過去に起きた類似のパターンをデータベースから手軽に検索できるようにしたもの。国や企業、個人それぞれが物事の判断や決定をする際、参考にしてもらう予定だという。

 

吉岡 名保恵 フリーライター

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よしおか なおえ / Naoe Yoshioka

1975年和歌山県生まれ。同志社大学を卒業後、和歌山県の地方紙「紀伊民報」で記者として勤務。結婚を機に退職し、国立大学医学部の非常勤職員などを経てフリーに。現在はライターとしてビジネス、教育、ライフスタイルなどを中心に幅広く取材やインタビューを担当。大学時代にグライダー(滑空機)を始め、(公社)日本滑空協会の機関誌で編集長も務めている。

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