貧困世帯育ちの起業家が大企業のCEOになるまで 自分の直感を信じ突き進み、チャンスを掴んだ

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2008年にカリフォルニア州スタンフォードに到着したトリスタンは、当時24歳、同じ歳の若者が何百万ドルも稼ぎ、世界を変えているのを目の当たりにした。

「『うわぁ、何で僕はこのことを知らなかったんだ?』と思ったよ」

トリスタンはビジネスを学び始めるのと同時に、身の周りで起きるあらゆる技術革新にも関心を深めていく。そうして熱中したのがツイッターだった。当時、このソーシャルメディア・プラットフォームは、月間ユーザー数50万人ほどの和気あいあいとしたコミュニティだった。

トリスタンは、その活発なメンバーの1人となったが、大学のクラスメートたちには理解してもらえなかった。ただし、それはラッパーのMCハマーとの運命的なできごとが起きるまでの話だ。

「会計学の授業を受けていたとき、MCハマーがキャンパスに来てスピーチする予定だったのを思い出して……」とトリスタン。「気がつくと、周りが何やらざわついていたんだ。彼が本当に来るのか、みんな半信半疑だったみたいで。さっそく僕はツイッターを開いて、MCハマーにメンションを飛ばして尋ねてみた。『来るんですかね?』と。すると3秒後には返事があり、僕はクラスメートたちに言ったよ。『おい、彼は来るよ。ほら、見てみろよ』」

何曲ものプラチナディスクに輝くアーティスト本人から返事がもらえたんだ!

自分の直感を信じること!

トリスタンはソーシャルメディアの力を予測していただけではない。自分の直感を信じることの重要さを感じ始めたのだ。

彼にはオープンスペースを見つける才がある。他の人たちには「ノー」と見えるところに、トリスタンには「イエス」が見えたのだ。「ノー」ばかりのフィールドに「イエス」を見出すのが早ければ早いほど、チャンスは大きくなる。

2012年、トリスタンは「フォースクエア(位置情報を利用したSNS。フォースクエアの技術はツイッターのタグ付け機能に利用された)」に関わり、事業開発チームをいちからつくり上げる。

「このとき、そのプラットフォームを利用する業者はゼロ、ブランドもゼロだった。フォースクエアを去ることになった頃には、業者数は100万を超えた。僕らはたった3人で始めて、辞める頃にはスタッフが150人になっていた。率直に言うと、僕は外に打って出て、野心的な事業を自分の手で築きたいと思い始めていた」

彼は次の動きを計画するのにうってつけの場所に着地する。ベンチャーキャピタル会社のアイコン的存在、アンドリーセン・ホロウィッツの共同設立者、ベン・ホロウィッツから客員起業家としての視野で新しいビジネスを企画してみないかと誘われたのだ。

トリスタンは数カ月間、ひたすらビッグアイデアをひねり出そうとしていた。

「銀行を興すのもよし、貨物やトラック輸送の整備もいいと思っていた。国内の肥満症対策にも興味があった……」そして突然、ひらめいたのだ。「僕自身はとにかく毎日の髭剃りにストレスを感じていたんだ」と。

快適な髭剃りなんて、アイデアの規模が小さすぎると思うかもしれない。しかし、起業可能なアイデアは、大規模である必要はない。むしろ、なおざりにされてきた問題を扱うことがポイントだ。

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