ビッグアイデアは周囲の「ノー」から生まれる実例 GoogleやLinkedInも初めは荒唐無稽と言われた

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投資家たちから「ノー」を引き出すアイデアには可能性がある(写真:sofiiashunkina/PIXTA)
成功者たちは自らの経験から、ある真実に気づく。投資家たちから「ノー」を引き出すアイデアには可能性があると。エンジェル投資家としても名高いリンクトイン共同創業者のリード・ホフマンは、自らMCを務めるポッドキャスト「MASTERS of SCALE」で世界的な成功を収めた起業家たちの声を数多く聞いてきた。
今回は、この番組発の書籍『マスター・オブ・スケール 世界を制したリーダーが初めて明かす事業拡大の最強ルール』より、「ノー」にまつわるホフマンの分析、そして彼自身の創業秘話を紹介する(3回シリーズ。今回は第3回)。
第1回:投資家に148回「ノー」と言われた起業家のその後
第2回:貧困世帯育ちの起業家が大企業のCEOになるまで

新たなビッグアイデアは、既成概念にとらわれない発想から生まれる。アイデアがビッグであればあるほど一般常識から大きく外れるため、リスクが高いと見なされ、荒唐無稽とさえ思われがちだ。

だが、ビッグアイデアとはそもそも周囲から多くの「ノー」を引き出す類いのアイデアなのである。

前例がないから「ノー」が出る

そして、これは実に理にかなっている。従来の社会通念に反するアイデアだからこそ、おそらくはほかの大手企業やライバル会社が今までそれを試すこともなく、また、すでにほかの起業家がそのアイデアによって成功を収めていることもないのだ。

「反逆的思考を持つ」ことは根本的な法則の1つである。既成概念にとらわれず、そのうえで適切に思考することによって、他者に先駆けて有利なスタートを切れるのだ。

グーグル(Google)の初期段階では、検索サービスは広告で利益を得るには最悪の方法であると見られていた。

当時、有益な広告の評価基準はページビューとサイト滞在時間だった。「検索」だと利用者はサイトからあっという間にいなくなってしまう。これが優れたビジネスモデルと考える者など1人もいなかった。

しかし、グーグルはそのビジネスに打って出て、オンライン広告のルールを書き換えた。

TEDトークについては、どうだろう?

ポッドキャスト「MASTERS of SCALE」制作者の1人、ジューン・コーエンが、TEDトークをオンライン配信するというアイデアを投資家たちに持ちかけたとき、「アイデアが小さすぎる」というのが大方の意見だった。録画した講演をネット配信する? いったいどこの誰が見るというのだ? それに、コンテンツを無料で提供すれば、高額な費用を要する講演会というビジネスモデルをひっくり返すことになりはしないか?

だが、実際には真逆のことが起きた。

TEDトークの人気は短期間に急速に高まり、同時に、講演会の需要も大幅に拡大したのだ。その後の数年でチケットの値段は5倍にまで上がった。

もしあなたが既成概念にとらわれないアイデアを──現状を疑い、これまでと違う方法でより快適な生活を目指すアイデアを──持ちかけるつもりなら、しっかり心の準備をして一連の拒否を受け止め、そこから学べるものは何でも学ぶといい。そして「ノー」の大合唱から価値あるフレーズを聞き分け、次に進むための手がかりにしよう。

斬新なアイデアは「ノー」を引き出す

「ノー」はいろいろな形でやってくる。役立つ情報を伴っていることも多い。そこで知っておかなければならないのは、「ノー」のなかに何があるかを見抜く方法だ。

どの起業家にも人間の本質についての持論があり、それが各自の仕事の特徴になる。ホフマンの持論は、もっとも深い人生の意義と喜びは自分以外の人々から与えられる、というものだ。

2002年、ホフマンがリンクトイン(LinkedIn)のサービス開始に向けて動き始めたとき、彼は自分の望みが人と人とをつなぐプラットフォームの構築であり、その目的は人々に生きる意味と満足感を与えることであると理解していた。

彼は、ユーザーのアイデンティティーやユーザーの持つネットワークがプラットフォームを構成し、そのプラットフォームを通してビジネスチャンスを見つける、と確信していた。人々がオンラインでつながる形態にはさまざまなものが考えられるが、なかでも仕事関連──求職活動が、もっとも緊急性の高い要件にも思えた。

ホフマンは、これを基調にして自分で思い描ける最大の、そしてもっとも斬新なビジネスアイデアを探し続けた──投資家たちから両極端な、たとえば、数人が「なるほど!」と思う一方、多数が「気は確かか?」という反応を引き出す類いの、既成概念にとらわれないアイデアを。

リンクトインは、まさしくその類いであった。ホフマンの目から見てその価値の大きさは明らかなのに、誰1人理解を示さなかった。つまり彼も、驚くべき数の「ノー」を受け取ったということだ。

大逆転を呼び込んだ工夫と決断

2002年に、リンクトインのようなソーシャルプラットフォームが、ネット体験を改善するのに役立つかを理解できる人はいなかった。そして、誰もがアイデアは素晴らしいが、自分には関係ないと思うらしかった。

異口同音に言われ続けたのは「僕ら向きではない」という言葉だ。

若い人たちからは経験豊富な専門職向きのサービスだと思われ、経験豊富な専門職の人々からは、「若い人たちにとってはよいサービスかも」と言われた。また、科学技術者たちには伝統産業向けのサービスと見なされ、古くからの産業からは最新技術を駆使したテック産業向けのサービスだと思われた。

ホフマンたち共同創業者チームは、幅のある反応に対して、どういう行動をとるべきか決断しなければならなかった。さまざまな反対意見とあいまいな反応に耳を傾けながら。

メンバー登録をクローズドにすべきか、オープンにすべきかを熱心に話し合う。この件についてのフィードバックもあいまいで、強い賛成も反対も見受けられず、むしろ、誰もリンクトインのはっきりとしたイメージがつかめていないことが判明する。

「それならば、あえて思い切ったやり方で行ってみるか」と、最終的にメンバー登録はオープンにすることが決まった。

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ネットワークへの加入をオープンにすると、そのクラブの独占性を失うことにはなるが、多くのユーザーを一気に獲得するという利点もある。そして、やがてそれらのユーザーを起点として口コミが広がっていった。

そこで、ホフマンとそのチームは、ログインせずに閲覧できるサービスも追加し、ユーザーの専門分野やキャリアを公開すれば簡単にそのネットワークを広げられるようにした。

その結果、リンクトインはバイラルループ(ウィルスが増殖するように、口コミによって急速にユーザーが増える状態)を発生させ、ユーザーが次々に友だちを呼び込むようになる。最高潮に達したとき、登録メンバーは5億人、収益は60億ドルを超えた。そして2016年、リンクトインはマイクロソフトによって262億ドルで買収されたのである。

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