貧困世帯育ちの起業家が大企業のCEOになるまで 自分の直感を信じ突き進み、チャンスを掴んだ

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起業家が否定的なフィールドに立たされたとき、頼るべきものは何なのでしょうか(写真:Zinkevych/PIXTA)
投資家たちが起業家に「ノー」を突きつけるとき、そのアイデアには本当に価値がないのだろうか。リンクトイン共同創業者のリード・ホフマンは、投資家の「ノー」には的外れなものもあることを指摘する。
では、否定的なフィールドにおいて頼るべきものは何なのか。世界中の起業家が注目するポットキャスト「MASTERS of SCALE」発の書籍『マスター・オブ・スケール 世界を制したリーダーが初めて明かす事業拡大の最強ルール』より、「ノー」に屈しない好例を紹介する(3回シリーズ。今回は第2回)
第1回:投資家に148回「ノー」と言われた起業家のその後

1904年、キング・ジレットのアイデアにより、それまで何百年もの間、行われてきた髭剃りの習慣が変わった。

男たちは、安全のために理髪店などでカミソリを顔にあてて髭を剃ってもらっていた。しかしキングは1枚刃をヘッドに入れて、それをホルダーに装着し、自宅で自身の手で安全に髭を剃ることを可能にした。それが、大量市場シェービング産業の始まりだった。

それから20年も経たないうちに、ジレットの安全カミソリの特許が失われると、新しい競合他社は、人目を引くため(と、特許取得のために)刃の枚数を増やし、使い捨ての1枚刃から替刃式3枚刃や5枚刃、6枚刃までも市場に送り出した。

刃が増え続けたことで、多くの男性が以前より手軽に良い剃り味を体感できるようになった。しかし、黒人男性のように頬髭がカールしている人々にとっては、逆に埋没毛や毛包炎やカミソリ負けといった痛みを伴う症状が起き始める。彼らにとって髭剃りは以前よりも不快になったのだ。

ここに登場したのがトリスタン・ウォーカーである。ウォーカー&カンパニー(Walker&Company)の創業者兼CEOだ。

起業に大規模なアイデアは不要

ニューヨーク市クイーンズ区の「貧困世帯向け住宅で育った」ことを自認するトリスタンは、家族と生活保護を受けて暮らしたこともある。

「僕の目標はたった1つ。それは、できるだけ早く、できるだけ裕福になること」

そのための手段として、「俳優かスポーツ選手になることや、ウォール街で働くことも考えた」が、それは難しいとわかった。残るは起業家だ。「『ここに可能性があるはず』と気づいて、その日のうちにスタンフォード大学ビジネススクールに出願手続きをした」。

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