フリー転身2カ月でがんに…笠井アナが見た世界 闘病生活を「セルフワイドショー」にした真意

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改めて、がん発覚から今までを振り返ると「引き算の縁と、足し算の縁」だったと笠井さんは語る。

はじめに「引き算・足し算」を感じたのは東日本大震災を取材していたとき。

震災2日目から現場で取材をしたが、現場で聞こえてくるのは、「もうダメだ」といった、マイナスな言葉が多かった。しかし、震災から3週間くらい経つと、ボランティアの知り合いが増えた、病院で看護師さんと知り合った、避難所で新しい友達ができたなど、足し算の縁も聞こえてきた。最悪な状態のときに生まれた縁や、出会った人、ものを取り込んで生きていく。その強さを被災地で学んだ。

そして数年後、自分が「がん」になった。もちろん、はじめはマイナスの出来事、引き算しかない。フリーになって早々というショックもある。しかし、このまま凹んでいても被災者の人たちに笑われてしまう。

がんになったから終わりではなく、がんになったからこうなれた。そう言える人生を歩もうと入院中に切り替えた。

料理をしない三男が卵焼きを作ってきてくれて…

それに、些細なことにも喜びはある。たとえば、テレビをつけたら、たまたまやっていた漫才がめちゃくちゃ面白かった。今日見たYouTubeの音楽が泣けた。誰々がお見舞いに来てくれた――。

特に覚えているのは、三男が病室にきたとき。「高校生だった三男が、卵焼きを作ってきてくれたんです。料理なんか全くしない奴だったのに。それが、いつもと違う味、懐かしい味だったんです。聞いたら、おばあちゃんに習ってきたっていうんですよ。いや、こういうときはお袋の味でしょって笑ったけど、こんな感動なかったですよ」

がんにならないと体験できなかったこと。これこそ、足し算の縁だという。

もちろん、がんになって良かったなんて思っていない。とても辛いしきつい。マイナス面も多いけれど、それとは違った次元のプラスがあるということだ。

がんになって、たくさんの“がん友”もできた。無二の親友に出会う人たちもいる。

それに現役世代はガンになっても回復して日常に戻ってくる人も多い。確かにがんは、日本人の死亡理由の第1位だ。しかし、がん=死ぬ時代は、現役世代に関して言えば違う。だから諦めてはいけないと、笠井さんは力強く語る。

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