フリー転身2カ月でがんに…笠井アナが見た世界 闘病生活を「セルフワイドショー」にした真意

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テレビは印象のメディアでもある。「笠井 ステージ4」と世の中に出た時点で、「笠井終わった」「笠井、死ぬな」といった雰囲気を醸し出されてしまう。それは悔しいと思った。そのため、ステージ4を公表したのは退院した後、『とくダネ!』に出演したタイミングになった。

笠井さんは、報道に携わるメディアの人間だ。何か思ったからといって、そのままの感情を、ただ雑然とブログに載せることは、メディアの人間としてできないと思った。

もちろん仕事柄、読みやすい文章を作ることには自信があった。しかし、がんだからといって何を言ってもいいのか。そうではない。これを言ったら別のがん患者さんが嫌な気持ちになるかもしれない。失望する可能性もある。とくに、自分の治療がうまくいっているとき。「俺はこんな治療でうまくいった!」なんて書いてしまうと、そうではない患者さんはどう感じるか――。

そのため、SNSに投稿する前に一度妻のチェックが入り、少し整えた形で投稿した。妻は、報道取材、アナウンサー歴が長かったため、的確なアドバイスをしてくれた。「こういうことは書かないで」「ダメ、この表現直して」とまるで編集デスク。チェックなしで掲載したときは、すぐにLINEがきたこともあったという。

「令和の患者」は受け身では足りない

入院してみて、気づきもあった。患者として受け身でいるだけでなく、自分の意志をハッキリ表明することだ。

今までは、インフォームドコンセントといって、医療者=ピッチャーが投げた球に対して、患者はキャッチャーとしてボールを受け取るだけだったかもしれない。しかし令和は違う。自らピッチャーとなって、医療従事者にボールを投げることが大切だという。

それは単なるコミュケーションではない。自分の意見をきちんと伝えるのだ。そう思えたのは、担当の医師が笠井さんの体調や要望を常に意識して聞いてくれたこと。

自分がどういう治療をしたいか。したくないのか。どう過ごしたいのかと。そのおかげで笠井さんも治療方法はどうか。薬の量は適切か。いろいろな点でディスカッションができたという。

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