フリー転身2カ月でがんに…笠井アナが見た世界 闘病生活を「セルフワイドショー」にした真意

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2つ目に、自分が闘病生活を送る姿を記録に残したいと思ったことだ。ドキュメンタリーとして記録があれば、生きて帰ってきたときはもちろん、自分が死んだらさらに価値が上がると思った。職業柄といえる。家族は嫌かもしれないが、自分の最後の仕事としてはふさわしいと思った。

3つ目に、自分たち報道人は間接報道を行っている。震災や事故現場に行って、人から聞いた話を伝えている。しかし、自分自身について声を出すことは、セルフワイドショーとして、とても意味のあることだと思った。

4つ目は『とくダネ!』で独占取材していた西城秀樹さんの闘病生活だ。西城さんは、最後は言葉がもつれ、痛みに顔を歪め、杖をついてフラフラしながら歩いていた。そうした姿をすべてさらけ出した。

それは、今までファンでいてくれた人、同じように歳を重ねている人に対して、「俺は今頑張っているから、みんなも頑張ろうよ」と伝えるためだったという。自分がもし大病を患ったときは、自分も何かの役に立てるようなことをしようと思っていた。

競合、テレビ東京のTシャツを着た理由

『とくダネ!』で病気を公表した当日。すでに普通に歩ける状態ではなかった笠井さんは、そのまま病院に向かい、入院生活が始まった。

短くても入院生活は4カ月から1年。そう医師から言われていたため、入院前からいくつか考えていたことがあった。

(撮影:今祥雄)

まずは、とにかく情報発信をすること。がんが分かり、初めてInstagramやブログを開設した。Instagramのアカウントを開設した当初は、フォロワーは300人程度。当時大学生だった息子は1000人だった。

しかし、『とくダネ!』でガンを公表すると、フォロワーが300人から3000人、一時は30万人まで増えた(2022年9月27日現在21.7万人)。

「もちろん自分の人気ではなく、がんに興味がある人たちの数字です。ものすごい現実を見せられたような気もしましたが、その30万人が励みになったのも確かです」

そして着るものも意識した。コロナ禍では面会制限があって、家族が頻繁に病院に来られない。着替えは、病院で一日300円程度のパジャマを頼んでいたが、毎日同じ服を着て、ひたすら単調な時間を過ごす。これは気持ちが滅入る。

そこで、周りからお見舞いのリクエストを聞かれるとTシャツを頼んだ。

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