フリー転身2カ月でがんに…笠井アナが見た世界 闘病生活を「セルフワイドショー」にした真意

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気づけば、自分も悪性リンパ腫の治療を行う、医療者の一人だ、との自覚が芽生えたという。

次第に薬剤師、栄養士、看護師にも自分の細かな要望を伝えるようになった。看護師は、1人ひとりの名前やキャラクターを覚えていくと、会話がしやすくなった。頼みごともしやすくなって、入院生活、QOL(生活の質)が上がった。

栄養士との打ち合わせも大事だった。味覚障害や食欲不振もあったので、朝は、ご飯ではなくてパン、その代わり昼は頑張ってご飯を食べる、夜は食べやすい麺類はどうかと話し合った。または、量が食べられないと言えば、ハーフ食といって、量は半分だが高カロリーなものを教えてくれた。薬剤師さんにも痛みの相談をした。いずれも、大半の患者は遠慮してやらないことだ。

(撮影:今祥雄)

もちろん、病院側にもできること・できないことがある。ただ、今までのいわゆる昭和の患者たちは、わがままを言ったらいけない、これ以上迷惑をかけられないと我慢することが多かったかもしれない。

しかし、自分の意見を言うことはわがままではない。令和の時代、医療者側も患者の言葉を待っているという。「また、あの患者がなにか言ってるよ」というのも違うのだ。

病院でWiFiが使えない…

2019年4月末。4カ月の入院生活を終えて無事に退院した。2020年6月にはすべての治療が終わり、今は、とても元気に、そして活き活きと仕事をしている。

退院後は、「#病室WiFi協議会」という団体を作った。コロナ禍で入院を経験し、誰もお見舞いに来られないときにインターネット環境が自分を助けてくれた。

しかし後から調べてみると、全国の7割の病院では、入院患者用の無料のWi-Fiは飛んでいないと知った。有料だからと入院中にネット接続を我慢している人が多くいることにも驚いた。

そこで、#病院WiFi協議会を8人の仲間と作り、厚生労働省に訴えた。活動の結果、補助金がつくようになった。ただ、緊急的な措置で半年で期限が切れたため、また新たに厚生労働省に頼んでいるところだという。

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