梅沢:たとえば、この前発表されたBABYMETALの新曲がメロスピ(メロディックスピードメタル)調だったんですね。その新曲を聴いた若い子たちはきっとメロスピというメタルのサブジャンルを知りたがるだろうから、「メロスピ道」という、ジャンルの歴史や代表的バンドを深く知ることができるような企画を立てました。
もちろん、BABYMETALがやっているからやるというのはベタ過ぎるので、そこは本編では言及しませんでしたが。雑誌にテーマや流れがあって、そこにいろいろな企画をピースとしてはめていけば、読者はやんわりと流れをつかんでくれて、面白く読んでくれるんだろうなと思っています。読者目線というか観客目線を徹底させていますね。
常見:コアなメタルファンも、BABYMETALからメタルに興味を持ったような新参のファンも置いていかない「おもてなしの心」を感じます。この号を読むだけで、広く、深くメタルの歴史や曲についてわかるようになりますよね。自分が好きなバンド目当てに『BURRN!』を読んで、メタルに詳しくなっていった青春時代を思い出しました。
梅沢:そうですね。僕も伊藤政則さん(音楽評論家)のラジオや原稿、あとそれこそ中学高校の頃に読んだ『BURRN!』でメタルにはまった人間なんで、影響をモロに受けています。だから、自分の好きなバンドがほかのどんなアーティストや音楽がルーツなのか掘り下げたくなりますね。
作り手が楽しめば読者はついてくる
常見:BABYMETALから小室哲哉と、かなり幅広いアーティストを取り上げている『ヘドバン』ですが、「掲載されるアーティスト」と「掲載されないアーティスト」の境界線はあるんですか?
梅沢:ぶっちゃけると、僕自身が面白がれるか、そして楽しめるかどうかですね。あとは「メタルを広げたい」という思いで雑誌を作っているので、「このバンドやアーティストを取り上げたら、メタルファンが増えるだろうし読者はもっとメタルを好きになるだろうな」と思ったら、積極的に取り上げます。
常見:読んでいて、正攻法も飛び道具も両方使えるぞという印象です。吉田豪さんのToshlや小室哲哉のインタビューはほかの雑誌ではまねできない飛び道具ですし、一方で最新号では「Judas Priest」(ジューダス・プリースト)や「Iron Maiden」(アイアン・メイデン)といったまさにメタルの王道といえるバンドを取り扱っています。
梅沢:どんなアーティストを扱うにしても、「ヘドバン色」が出るように心掛けています。
常見:創刊号が出た当初から、雑誌の色は確立されていましたよね。あとから、梅沢さんが編集長だと知って納得しました。ここまでいい意味で期待を裏切ってくれる雑誌はなかなかないと思います。
梅沢:プロレスの試合と一緒で、予定調和が多すぎても退屈だと思うんですよ。たとえば、新曲発売に合わせたインタビュー記事って、今じゃ発売日に合わせてインターネットで見られるじゃないですか。レコード会社だって、そっちのほうがだいたいどのくらいの効果が出るかもわかりますし、なにより即効性がありますよね。リリースインタビューに関しては今後はネットの方が主流になると思ったので、『ヘドバン』ではそこにこだわっていないです。実は今回の号でも、あえてアーティストへのインタビューはいっさい入れませんでした。
常見:確かに特集に取り上げられたBABYMETAL、Judas Priest、Iron Maidenのメンバー本人たちはいっさい出てきませんね。
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