賛否両論の「デジタル給与」押さえておきたい論点 それでも進めたい?見えてくる政府側の思惑

✎ 1〜 ✎ 80 ✎ 81 ✎ 82 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そう考えると、政府がデジタル給与を進めたい裏側の理由も見えてくる。

日本の金融資産のうち、預貯金が約半分を占めているのはご存じの通り。しかもコロナ下で消費が伸び悩み、給料が銀行口座に振り込まれても、「強制貯蓄」と呼ばれるようにそのまま滞留していた。その一部を「使うためのデジタル通貨残高」に移し替えれば、そのぶんは消費に回るだろうと計算できる。デジタル給与は消費喚起策としても有効なのだ。

「貯蓄から投資へ」もスムーズに?

消費に回るだけではない。PayPayはアプリ内で有価証券の買付や売却が行える資産運用サービスを始めている。

アプリ内でPayPay証券に口座を開けば、100円から1円単位でPayPay残高(PayPayマネー)を使った投資ができる。証券口座への現金の移動は必要ない。

取引は6つの投信コースから選べ、運用益が出て売却すると、PayPay残高(PayPayマネー)へ即時チャージされるという。

デジタル給与が解禁されれば、銀行口座を登録したり、入金の手間をかけることなく、シームレスに投資ができることになる。同様のサービスを導入する事業者が増えれば、期せずして「貯蓄から投資へ」の流れが加速するかもしれないのだ。

ただし、心配なのはデジタルならではのトラブルや不正利用だ。これまでもスマホ決済は不正利用やなりすまし、ID乗っ取りといったサイバー犯罪のターゲットになってきた。その都度セキュリテイを高め、本人確認を厳粛化し、被害への補償制度を整備してきたとはいえ、完全に防ぐことは不可能だろう。

現在でも主なスマホ決済事業者は全額補償というスタンスだが、警察への被害届けなどの手続きが必要で被害が回復されるまでは時間もかかる。

利用者側の過失の有無によっては全額補償されないケースもある。例えば、銀行では「フィッシング手口の注意喚起をしていたにもかかわらず、それに騙され、ID・パスワードを入力してしまった」場合は過失ありとみなされるのだ。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事