ドンバス、ヘルソン、ザポリージャのロシアへの編入という事態は、ウクライナ側が攻勢に出て攻め込もうとしている地域をロシア領にすることで、「祖国防衛」の大義を生み出そうということなのである。
国民は部分動員と「歴史的ロシア」の回復という2つの出来事を同時に突きつけられることになった。プーチン政権による対ウクライナ戦略は国民の反発や支持率までを十分に検討して決定されていると言わざるをえない。
看過できない核使用の可能性
もう1つの大きな問題が核の使用の可能性である。プーチン大統領は21日の国民向け演説で、核兵器を含むあらゆる手段を行使しても、ロシアの領土一体性、独立、自由を保障するのだと宣言した。これはただの脅しだろうか。そうではないだろう。国民の動員による戦争に突入しようとしている今、もはやただの脅しとして侮るわけにはいかない。
核の使用のきっかけとして最も可能性があるのはザポリージャの原発への砲撃だ。ロシア、ウクライナ双方が相手側による砲撃だとして互いに非難しているが、実際に同原発を占拠しているのはロシア側。ロシア支配地域の北端にあり、前線に位置しているため非常に危険である。
ザポリージャ併合後に万が一ここに砲弾があたり、原発事故が発生すれば、ロシア側はこれをロシア領への「核攻撃」として受け止める可能性が高い。そしてそれに対して核による報復に出る可能性もあると考えられる。そう考えると、核の使用まで秒読み段階にあるのかもしれない。
そもそもこの紛争は、ウクライナのNATO加盟を防ぎ、中立化しようという安全保障上の取引がアメリカやNATO側に受け入れられなかったことから、実力によってそれを実現しようとして始まったものである。
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