ロシア住民投票で急激に高まる「核使用」の現実味 もはやプーチン大統領による脅しだと侮れない

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勝手と言えば勝手な話ではある。しかし、アメリカがそのような意図を持っていないかと言えば、「持っていません」と心から言えるアメリカの要人は少ないのではないだろうか。

では、「歴史的正義」とはなんだろうか。これは、プーチン大統領も演説の中で「歴史的土地であるノヴォロシア」として言及している。ノヴォロシアとは、まさにドンバス地域(ドネツク、ルハンスク)やクリミア、ヘルソン、ザポリージャ一帯を指す地域名称であり、「新ロシア県」という行政地区が定められていたことがある。

拙著『地政学と歴史で読み解くロシアの行動原理』で当時の経緯について説明してあるので興味がある読者には読んでいただきたいが、簡単に言えば、18世紀の後半、エカテリーナ女帝の時代にオスマン帝国と戦われた二度の露土(ロシア・トルコ)戦争によって、当時のクリミア・ハン国というタタール系国家の支配領域をロシアが獲得した。

その地域に設定されたのが新ロシア県、すなわちノヴォロシアであった。その領域はアゾフ海沿岸部からクリミア、ドンバス、ザポリージャ、ヘルソン、オデーサまでを含むものであり、まさに住民投票によってロシアへの編入が問われようとしている地域なのである。

4地域併合でウクライナ紛争は新たな局面へ

住民投票に基づく4地域のロシアへの併合によって、ウクライナ紛争は新たな局面を迎えることになる。

これまでのロシアの「特別軍事作戦」は、ロシアが独立を承認したドンバスの解放に同盟国として協力するという建前だった。しかし、これらの地域がロシアに併合されることになれば、これはロシアそのものの「防衛」ということになる。外国のために戦うというのは、同盟に基づく協力であったり、介入であったりするわけだが、国土を防衛するというのは国家の基本行動であり、義務である。

つまり、これまではロシア軍の一部による「作戦」として戦闘が遂行されていたわけだが、防衛行動となると、持てる軍事力をすべて投入し、場合によっては総動員をかけて戦う大義名分となり得る。

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