「うつは甘え」精神論を語る人が知らない最新事情 うつ病患者は細胞の老化が2年程度加速している

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精神論で語られがちな「うつ病」の先端研究を紹介(写真:EKAKI/PIXTA)
職場でのメンタルヘルスケアの必要性が高まる中、うつ病などに対する正しい知識が求められています。脳研究者の毛内拡氏の著書『すべては脳で実現している。』から一部抜粋し、うつ病に関する先端研究を紹介します。

うつ病は世界的な問題であり、その患者数は増加の一途をたどっています。日本人の約6%が、一生のうち一度はうつ病を経験するといわれています。気分の変動によって日常生活に支障をきたす病気を、総称して「気分障害」と言います。

気分障害は大きく「うつ病性障害」と「双極性障害(そううつ病)」に分けられます。うつ病性障害の指標として、9つの症状があります。詳細は割愛しますが、「抑うつ気分」と「興味または喜びの喪失」をはじめとして、これら2つのいずれかと、残りの7つの症状のうち5個以上当てはまる場合は大うつ病性障害と分類されています(※これらは、基準とするガイドラインによって異なる場合があります)。いわゆる「うつ病」は、この「大うつ病性障害」のことを指します。

大うつ病性障害により、心血管疾患、アルツハイマー病、骨粗しょう症などのさまざまな老化関連疾患や早期死亡率のリスクが高まることは知られていますが、これは、自殺や生活習慣といったものを考慮しても、予想外に高く不可解でした。

これまでうつ病は、純粋に精神上の問題であると捉えられてきており、「うつは甘え」「気合いが足りない」などと精神論で述べられることが多くありました。しかしながら、脳内物質や脳細胞の減少、脳内炎症の増加など、生物学的な根拠が見つかってきており、「脳という臓器の疾患状態」と捉えるべきであると、考えが改められつつあります。

さらに近年では、うつ病は心因性ではあるものの、単に脳だけの問題でなく、その影響は広く肉体に波及し、〝細胞の老化〟を促進することや、全身で起こる炎症状態を悪化させることもわかってきているのです。

うつ病の生物学的な実態が発覚

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームは、DNAの化学的変化から生物学的な年齢を算出する「エピジェネティック・クロック」という、細胞の老化を測定する方法を用いて、うつ病によって細胞の老化が促進されるかどうかを検証しました。

薬物治療を受けていない大うつ病患者49人と、同年齢の健康な対照者60人の血液サンプルを測定した結果、大うつ病患者では、肉体的には老化の兆候がみられないものの、細胞の老化が2年程度加速していることを示すデータが得られました。

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