「うつは甘え」精神論を語る人が知らない最新事情 うつ病患者は細胞の老化が2年程度加速している

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さらに、キングス・カレッジ・ロンドンの研究者らは、英国バイオバンク・プロジェクトの一環として集められた約8万6000人を対象に、さまざまな年齢、性別、肥満度(BMI)、喫煙、飲酒、幼少期のトラウマ経験、社会経済状況の被験者から得た、血液サンプル、遺伝子データ、身体的・精神的健康についてのアンケート調査を解析しました。その結果、過去に大うつ病性障害を経験した人のうち約31%で、血中に炎症バイオマーカーであるC反応性タンパク質(CRP)が高レベルで検出されました。

また、うつ病によって炎症が増加するのは、生まれつきというより、むしろ食習慣や喫煙習慣の調節によるものであることも判明しました。このように、これまで漠然としていたうつ病が、実態を伴った疾患であることが明らかになってきたことで、具体的な治療法の提案が可能となります。今後は、ストレスによるDNAの化学的変化や、炎症を標的としたうつの治療や予防が期待されますが、まずは喫煙や食習慣などを改善することが重要なのかもしれません。

いじめを目撃するだけで「うつ病」になる?

うつ病は、肉体的なストレスよりも精神的なストレスによって発症するというのは、常識として受け入れられていますが、このとき、脳では何が起こっているのでしょうか。最近では、精神的ストレスによって海馬などの脳の部位が物理的に劣化する「うつ病の神経原性仮説」が注目されています。

しかし、動物実験においては、肉体的なストレスと精神的なストレスを切り離して実験することが難しいため、これを科学的に証明することは困難でした。

例えば、社会性敗北ストレスモデルでは、普通のマウスを、体格も大きく攻撃的なマウスと1日に数時間同居させることで、繰り返しいじめさせ、社会的引きこもり状態や、好物に対する興味の喪失など、ヒトにも共通して起こり得る「うつ様行動」を引き起こすことができます。しかしながらこの結果は、依然として肉体的ストレスという要因を切り離して考えることはできません。

そこで、東京理科大学薬学部の研究チームは、社会性敗北ストレスを受けている状況を別のマウスに目撃させることで、精神的なストレスだけを与えられるのではないかと予想し検証を行いました。その結果、マウスはいじめを目撃するだけで、引きこもり状態になることが判明したのです。また、このマウスの海馬において、新生した神経細胞の生存率が有意に減少し、その影響は4週間にわたりました。

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