――ひどいですね。しかし、これもよくあるパターンと言えるかもしれません。なぜか被害者のほうがキャリアを捻じ曲げられる。第1回のゆりなさんもそうでした。
元の職場に戻りたかったんですが、自分の中で踏ん切りをつけて、異動先の職場で前向きに生きようと思いました。自分なりにケリをつけてやっていこうと。異動後は以前の職場より時間的な余裕もありましたし、自分のことに集中して、精神的な回復のために時間を使おうと。
ただ、そう思ってやったことが、ハラスメントや労働法に関する書籍を読み漁ることでした。結局、心に傷を負う原因を取り除くこと以上に自分を癒すことはないという思いが強く、自然とそういう本を手にとっていました。それで、訴えを続けていくことにしたんです。その後、中立の立場の人を入れるといいとアドバイスを受けて、代理人を入れて勤務先と何度も話し合いの場を持ちました。
休職時、まさかの「給料満額支給」に感じたこと
――しかし、そこまでしっかりと動いていれば、さすがに「これはまずい」と改善のために何かしているポーズくらいは見せそうなものですが。
学校側はずっと、何ら対応をしませんでした。閉鎖的な業界だからなんでしょうかね。これが生徒や保護者の耳に入る形であれば事態も大きく違ったのかもしれませんが。
ーー教員としては生徒を巻き込みたくはないですしね。
また、私立校というのもあって、「金で解決する」という資本主義の弊害が顕著に表れていると感じたこともありました。
例えば、休職中は1年間、給料の80%が支払われるのが原則ですが、私の場合はまさかの変化なしでした。休んでいる間毎月、満額が支給されたんです。言葉にはされていませんが、「黙っていろ」ということだと受け取りました。
こういったやり方からもわかるように、上層部には改善のために何かする気など毛頭ないのだと痛感しました。今までにもこういうことは何度もあって、そのたびに握り潰してきたんだろうと思います。
――静かにしておけば大事にならずに済んでしまう仕組み自体を打開するシステムが必要ですね。
労働者の一人が声を上げたところで、いずれ沈静化すると高をくくっているんですね。
さらに悔しいのが、こんな職場でもなんとか仕事が回ってしまっていることです。辞めたり休んだりする教員がいても、代わりの人材がすぐに見つかってしまう。定期的に補充してこれまでもなんとかなってきたわけです。こういうことの繰り返しで、ますます上層部が自分たちの考えは正しいんだという思いを強くしていく……。
だからこそ「自分が動かないと、また同じように被害者が出るだけだ」「こういう歪んだ構造をどうにかして打破できないか」と思って、日々さまざまな本を読み漁りました。
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