下された常軌を逸した辞令と、今後の労働闘争の見通し
――転属してからは、加害者との接触はなくなったのでしょうか。
同じ学校法人が運営するグループ校なので、互いの勤め先を行き来する機会はあり、時折鉢合わせていました。訴えを起こしてからは以前のような態度を取られることはないですが、やはり顔を見ただけで動悸がしたり、気分が悪くなったりしていますね。たまたま取り次いだ内線が彼からのものだったことも何度かありましたし、今後もあると思います。
それに……転属から1年と少し経った頃、次年度からまた加害者と同じ職場に勤務するようにと内辞が来たんです。
組織体制が変更になる都合でということなんですが、そもそも加害者側は降格も転属も一切なくキャリアを温存され、私のほうが転属することになり、揚げ句今度は学校の都合で戻ってこいということで。それはさすがにないだろうと思いました。
――この期に及んで被害者の訴えを聞き入れることなく学校側の都合を押しつけられると。
話し合いを経て折り合いがつかなければ、次の手段を考えるほかないと覚悟を決めました。学校側の要求どおり加害者と同じ職場になってしまいます。「学校側の要求どおり加害者と同じ職場になってしまったら、また休職しないといけないな……」と思っていました。
――次の動きとしてどのような手段をとったのでしょうか。
厚生労働省の「個別労働紛争解決制度」の一環である「あっせん」と呼ばれる制度を利用しました。
これは「紛争当事者の間に、公平・中立な第三者として労働問題の専門家が入り、双方の主張の要点を確かめ、調整を行い、話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る」というものなんですが、要は派遣されてくる仲介者が同席して、労働者側と使用者(雇用者)側が話し合いの場を設けるというものです。
あっせんを申請した段階で過去に入ってもらっていた代理人にも相談したんですが、あっせんの場での相手側の出方を見て、最悪訴訟も視野に入れたうえで動かなくては、という話になりました。
――相手側の対応はここまでのらりくらりと沈静化を待つようなスタンスに思えますが、紀明さんは戦い抜くことにされたんですね。
そうですね。自分もそれまでは「さすがに裁判沙汰や警察沙汰までは……」という考えでした。殴られたとか、何か物的証拠のあるような加害ではありませんから、難しい戦いになるのはわかっていましたし、妻も同じ職場なので事を大きくしたくないという事情もありました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら