大企業に眠る優秀な人材を掘り起こし「起業家」へと導く。ベンチャーキャピタルなどが主導する、そんな取り組みが加速している。
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「今後のキャリアで”起業”を考えてみませんか」
浜田英揮氏は名刺管理のクラウドサービスを手がけるSansanで、インサイドセールス(見込み客への電話やメールでの営業)の責任者を務めていた。大きなプロジェクトが終わり、進路を考え始めた2021年夏、人材紹介サイト・ビズリーチ経由でメッセージが届いた。転職の誘いではなく、「起業家」としてのスカウトだった。
差出人はディー・エヌ・エー傘下のベンチャーキャピタル(VC)、デライト・ベンチャーズの坂東龍氏。同社は起業家候補として見込んだ人材をスカウトし、起業を支援する事業を展開しており、坂東氏はその責任者だ。
海外の成功事例など2000以上の事業案リストを用意し、候補者と事業計画を一緒に検討する。潜在需要などを検証したうえで、ゴーサインを出す。創業者はデライトの契約社員となり、開発費・人件費等をデライトが負担、外部からの資金調達が決まれば、株の75%以上を創業者が保有し、独立する。これまでに13社が独立起業した。
「自分にも可能性がある」と思えた理由
浜田氏は三井物産に新卒入社し、アメリカのハーバード大学でMBA取得後は多数の投資案件を担当。2016年から暗号資産取引所のビットフライヤーでアメリカ事業の立ち上げを担い、2019年にSansanに転じた。
「起業には以前から興味はあったが、まさか誘いが来るとは。でも最初から全面的に支援してくれる彼らのやり方なら、自分にも可能性があると感じた」と浜田氏は振り返る。
急ピッチで起業の準備が始まった。リストから自分ができるものを洗い出し、坂東氏との数回の打ち合わせを経て事業が決まった。
見込み客がSaaS製品の問い合わせフォームに入力すると、すぐに担当者との商談日程を決める画面が現れるという、アポ取りを自動化できるインサイドセールスのツールだ。アメリカの同業から着想を得たという。社名は「immedio」に決めた。
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