「脳ドック」をITで価格破壊、楽天役員OBの目算 「MRIシェアリング」ベンチャーが医療を変える

✎ 1〜 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 最新
拡大
縮小

「すごいベンチャー100」2022年最新版から7社をピックアップ。「医療」領域からは、脳ドックの価格破壊に挑む「スマートスキャン」を拡大記事で紹介する。

スマートスキャンの濱野斗百礼代表は、楽天でメディア・広告事業の執行役員を10年以上務めた後に起業。「未病のビジネスで50年、100年続く会社をつくりたい」と話す(記者撮影)

特集「すごいベンチャー100 2022年版」の他の記事を読む

スマートフォンからネット予約し、受付から帰路につくまで30分。価格は相場の半値以下という1万7500円。検査結果は数日後にウェブで確認できる。脳の健康状態を検査する「スマート脳ドック」を展開するスマートスキャンが今、波に乗っている。

きっかけはバスの事故だった。2012年、楽天トラベルが送客していたバスサービスが関越道で事故を起こし、乗客7人が死亡する大惨事となった。バスの運転手には脳の異常が見られていたという。

当時楽天の執行役員だったスマートスキャン創業者の濱野斗百礼(ともあき)代表は、バスやトラックの運転手は首から下の健康診断しか受けていないことを医師から聞かされる。脳の状態を診る「脳ドック」は4万~5万円と高額で、会社も運転手も負担できない状態だった。

脳血管疾患は日本人の死因の上位に位置する。濱野氏は「必要なのに受けづらい。そこに商機があると思った」と話す。

試験導入の20枠に500人が殺到

脳ドックの価格が高かった原因は、MRIの初期投資や固定費の高さにあった。そこで減価償却が終わったMRIを保有する医療機関の協力を得て、楽天の会員向けに1万円の脳ドックを試験的に案内すると、20の枠に500人ほどの応募があったという。

週刊東洋経済 2022年9/17-24号[雑誌](すごいベンチャー100 2022年最新版)
『週刊東洋経済 2022年9/17-24号[雑誌](すごいベンチャー100 2022年最新版)』(東洋経済新報社)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

ただMRIを空き時間に安く提供してくれる医療機関を探しても、取り合ってくれる医師は少なかった。脳ドックは自由診療だ。あえて安く提供するメリットが医師側にはない。「脳ドックをやるといっても、放射線技師やMRI画像の読影(所見の診断)をする医師も必要。当時は何もわかっていなかった。IT業界が入り込む余地がないと感じた」と濱野氏は振り返る。

それでも需要はあるし、ビジネスチャンスも大きい。楽天では「LTV(ライフタイムバリュー)」という言葉がよく使われる。中長期で顧客がどれくらいお金を落としてくれるかという指標だ。

次ページ楽天時代のつて活用し医師と機材を確保
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
すごいベンチャー100 2022年版
全26社を「時価総額」と「営業損益」でランキング
約400社の企業価値を一覧、5年前との比較も
グーグル、ペイパルなど米国の巨人も買い手に
セブンドリーマーズは2019年に破産手続き開始
パビリオン・キャピタルの日本担当者を直撃
米国で20年ベンチャー投資、WiL伊佐山氏の提言
治療アプリの「キュアアップ」に70億円出資
脱炭素ベンチャー「アスエネ」急伸する3つの秘訣
CO2排出量を可視化、情報整理の負担を7割軽減
「すごいベンチャー100」2022年最新版・全リスト
全社総力取材、これが未来のユニコーンだ!
「テスラ超え」誓う、令和発EVベンチャーの潜在力
将棋AI開発者と自動運転のプロがタッグで起業
「過酷な検品」を変える産総研ベンチャーの新境地
AIの難点を克服し「不良品サンプル」なしで実現
アパレル店員の「賃上げベンチャー」が生む次の波
自己資金だけで流通総額1380億円に到達の異例
「エンタメ企業をWeb3化」ガウディが生み出す熱狂
バンナムやサンリオも頼る「NFT活用の伝道師」
「南場氏の大叱責」で奮起したYOUTRUSTの針路
転職活動を「呼吸くらい自然に」、人材SNSの挑戦
「脳ドック」をITで価格破壊、楽天役員OBの目算
「MRIシェアリング」ベンチャーが医療を変える
新星「Web3」「ESG」ベンチャーが放つ異色存在感
Gaudiy、アスエネ、テイラー…注目業界の25社
ファンの熱量高める場を構築
排出量把握の負担を軽減
サブスク店の予約・決済管理
データで選手の技術向上支援
ブロックチェーンゲーム開発
企業のメタバース構築を支援
独自運営のブロックチェーン
NFT化でデータに価値を
モバイルアプリなどの開発
「パブリックチェーン」の開発
CO2可視化で「標準」狙う
再エネの収支を一括管理
独自の統計手法で透明性確保
ESG経営をクラウドで支援
小型水処理プラントを販売
戦略的プライシングの実行支援
AI活用による店舗支援SaaS
CFO向け経営管理クラウド
ERPシステム構築の効率化
紙の郵便物をクラウド保管
スポーツファンのための賭博
サッカー選手への道を平等に
スポーツを通じて分析力向上
CO2排出量集計を効率化
太陽光を初期費用無料で
完全自動運転車開発の新鋭
検品作業の自動化ソフト
企業向けのセキュリティ訓練
脳ドックをITで価格破壊
エネルギー密度高い電池開発
AIが安全運転をサポート
市販向け垂直離着陸機を開発
「空飛ぶクルマ」を開発
船舶の自律航行技術を開発
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内