ロシアへの経済制裁は一体どの程度効いているか 日本が学ぶ点は潜在的対立国の依存度を知ること

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そのため、戦時国債を発行せざるをえない状況にあるが、制裁によって、そうした資金調達には高いハードルが設けられている。つまり「資金不足」によって継戦能力を奪うというのが制裁の目的となる。

対ロ制裁からの教訓

今回の対ロ制裁から日本が学ぶ点は多いが、何よりもまず重要な点は、潜在的に対立する国への過度な依存は大きなコストを伴うというものである。日本ではサハリン2の問題などはありつつも、欧州諸国ほどロシアに依存していなかったことで、自らの経済に対する影響はそれほど大きくはなかった。しかし、それでも原油価格や天然ガスの価格は高騰し、ただでさえ物価状況局面にある中で、さらなる物価高をもたらすこととなった。その意味でも経済安全保障の観点から、潜在的対立国への過度な依存は早急に解消すべき問題である。

もう一点は潜在的対立国が自国の経済にどの程度依存しているのかを把握することである。ロシアの継戦能力を奪うという目標設定からすれば、最も効果があるのはロシアが強く依存している半導体や西側諸国の部品の供給停止であり、金融制裁である。

こうした制裁のメニューは、ロシアがどの程度西側諸国に依存しているかを把握したうえで効果を発揮する。そのためにも、潜在的対立国との経済関係は維持しつつ、相手が自国に強く依存するような状況をいかに作れるのか、ということが戦略的課題となる。日本はまだ他国にはまねできない製品を作る能力は残っている。その強みや「不可欠性」を強化し、他国が依存する状況を創り出すことこそ、制裁の効果を上げる手段なのである。

(鈴木一人/東京大学公共政策大学院教授、地経学研究所長)

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『地経学ブリーフィング』は、国際文化会館(IHJ)とアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が統合して設立された「地経学研究所(IOG)」に所属する研究者を中心に、IOGで進める研究の成果を踏まえ、国家の地政学的目的を実現するための経済的側面に焦点を当てつつ、グローバルな動向や地経学的リスク、その背景にある技術や産業構造などを分析し、日本の国益と戦略に資する議論や見解を配信していきます。

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