ロシアへの経済制裁は一体どの程度効いているか 日本が学ぶ点は潜在的対立国の依存度を知ること

✎ 1〜 ✎ 9 ✎ 10 ✎ 11 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

北朝鮮の制裁に限らず、多くの経済制裁は、十分な成果を上げているとは言いがたいが、今回のロシアに対する制裁では、ロシアの行動変容を促すようなことが困難だと言える。すでに述べたように、ロシアに強く依存している欧州各国は、制裁を実施しながら、同時にロシアからの天然ガスを輸入し、その代金を支払っているだけでなく、ロシアは戦略的に天然ガスを「武器化」し、欧州各国を脅している。

また、制裁によってロシア経済を破綻させるや、その結果として国民の不満が高まり、政権転覆や政策変更を求めることも困難である。なぜなら、ロシアに経済的な打撃を与えたとしても、国民の不満は強権的に抑圧され、市民のデモや反体制運動は抑え込まれ、ロシア指導部に影響を与えるのが困難だからである。

「弾切れ」状態にするのが1つの目的

では、ロシアに対する制裁の目的は何であろうか? それは、ロシアが戦争を遂行するうえでのコストを高めること、そして継戦能力を奪うことである。この点でとりわけ重要になるのが、半導体などのハイテク製品の輸出制限と、外国でのロシア国債の起債の制限である。

ソ連崩壊後のロシア経済は西側諸国のサプライチェーンに強く依存している。とくに、ロシアの半導体産業は事実上存在しないというほど国際競争力がなく、半導体製造は台湾のTSMCにほぼすべて依存している。また航空機などの部品も西側諸国に依存しており、ロシア製のドローンで使われている電子部品などは、西側諸国の電化製品などから流用したものであるとの報道もある。制裁によって武器の調達だけでなく、部品の調達ができないことでロシア国内での兵器生産に影響を与え、「弾切れ」状態にするというのが制裁の1つの目的である。

また、ロシアは原油や天然ガスを中国やインドに売ることで継続的に外貨収入を得ることができるとはいえ、膨大な戦費や占領地における「ロシア化」に必要な費用など、これまでのような原油や天然ガスの収入だけでは十分賄えない状況にある。原油価格の高騰で一定の収入は確保できているとはいえ、原油は大幅に安売りせざるをえず、戦費を調達するのは困難である。

次ページ「資金不足」によって継戦能力を奪うのが制裁の目的
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事