先行き不透明なウクライナ情勢の中で、プーチン大統領への批判が国際的にもロシア国内でも高まっている。反戦、反政府デモの参加者が拘束された、国外移住を検討するロシア人が急増しているといった報道もみられる。
このような反政府デモの高まりは、ロシアを内部崩壊させるのではないか、という臆測も飛び交っている。あるいは、プーチン側近の誰かがプーチンを止めてくれないか、何とかしてくれ、という切実な思いもある。
しかし、こうした見方には、ロシアが内部崩壊してほしい、というわれわれ自身の願望も含まれている。実際のところ、プーチン大統領を止められる人物はいるのだろうか。
治安機関と財閥という後ろ盾
まず指摘しなければならないのは、プーチン政権の基盤は盤石であるということである。それは、シロビキと呼ばれる警察や軍、諜報機関といった治安機関と、オリガルヒと呼ばれる財閥たちを味方につけることで成り立っているからだ。
プーチン大統領はまず、シロビキと呼ばれる治安機関を味方につけることでソ連崩壊後の混乱のロシアに安定をもたらした。ソ連を守ることができず、威信を失った治安機関に自信を取り戻させ、弱体化したロシア軍を復活させた。シロビキたちの信頼を勝ち取ったのである。
シロビキの代表格は、KGB出身のプーチン大統領その人である。プーチン大統領はシロビキの心や考え方をよく理解している。どうすれば彼らが納得し、満足するのかをわかっているのだ。彼らが反旗を翻せば、さしものプーチン政権も存続することはできなくなるが、プーチン大統領より長く、シロビキと付き合ってきたリーダーはいないのが現実だ。
シロビキ系の側近と言えば、第一にセルゲイ・イワノフ元国防相が挙げられるが、彼は、現在は要職についていない。KGB後継組織であるFSBの長官ボルトニコフはメドベージェフ大統領時代に長官についたが、首相になったプーチンがFSBを抑えるために行った人事で、彼がメドベージェフ大統領(当時)よりも、プーチン首相(当時)に忠実であったことは間違いない。
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