側近も国民も「プーチン」止められない悲しい事情 プーチンを支えているのはどんな人たちなのか

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側近が無理なら、国民はどうだろうか。

戦争には国民の支持と理解が必要だが、そのためにはわかりやすい理由と目的が必要である。そこでプーチン大統領が訴えるのが、ウクライナではなく、その背後にいるアメリカやNATOの「非道」である。ウクライナの現政権はアメリカの傀儡であって、ウクライナ国民の民意を代表していない、というのがその主張だ。

これがロシア国民にある程度受け入れられてしまうのは、特に中高年層に染み付いたアメリカへの反感である。プーチン大統領は巧みにその心理を利用している。ウクライナへの侵攻は受け入れがたいが、アメリカにそそのかされ利用されるウクライナはもっと受け入れがたい、と感じる人々にとっては、今回の侵攻はやむを得ない選択肢だというプーチン大統領の主張に納得してしまうのである。

アメリカが強力な対露制裁を指導していることも、「ロシアをいじめるアメリカ」というプーチン大統領の示す構図を受け入れやすくしている。プーチン政権は、そういった国民層を懐柔するため、情報統制を行い、できるだけ都合の悪い情報を拡散させないように努めているのだ。ロシアで高まっているデモが大々的な反政権運動に発展していく可能性は、残念ながら短期的には高くないと思われる。

プーチン大統領は、ロシアの象徴になってしまっている。大げさに言えば、ロシア国民はプーチン大統領を「ロシアを象徴する存在」として受け入れているのだ。戦争はやめてほしいが、動き出した事態を止めることはロシアの敗北を意味する。ロシアが敗北すれば何が待っているのか。ソ連崩壊の再現だろうか。それは困る。共倒れはしたくない。続けるしかないのだ。

経済的低迷続けばプーチンの威信低下も

しかしながら、以上の分析は短期的なスパンでの話である。アメリカが主導する大規模で強力な経済制裁は広範な影響を及ぼすだろう。すでに、外国への現金の持ち出しが制限されるなどの規制がとられ始めている。ルーブルは暴落し、外貨資産は差し押さえられ、ロシアはまさにデフォルトの危機に直面している。

さまざまな外国企業がロシアでの活動停止を決め、エネルギー産業からもエクソンやシェルといった大手が撤退を決定した。これは、プーチン政権下の20年余りでロシア国民が享受してきた経済的繁栄がすべて失われてしまうことを意味する。ロシアに安定と繁栄をもたらしたことで支持を得ているプーチン大統領にとっては大きな痛手となるだろう。プーチン大統領の威信が低下することは疑いない。

短期的にはプーチン政権が存続するとしても、2024年の大統領選挙でプーチン大統領が支持を集められる可能性は低まった。出馬しない可能性も十分あると考える。

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