「誰とでも仲良く」親の教育が少年に起こした悲劇 周囲を気遣うサッカー少年に起きたまさかの事態

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事件を起こしたのは、面倒見がよく、後輩から慕われることの多かった30代の男。感染症がきっかけで足を失い、仕事ができなくなったところから始まります。男が足の手術で病院に入院中、仲良くなった大学生がいました。大学生は、この優しく面倒見のいい男を慕っていろいろ話しかけてくれます。

あるとき男はこの大学生に対し見栄を張って、「ネットビジネスで稼いでいる」と嘘をついてしまいます。本当は、ネットビジネスに手を出したものの、失敗して借金を抱えているというありさまです。

最初は小さな嘘でした。しかし、これを訂正することができず、嘘に嘘を重ねることになります。大学生が「バイト先なくなっちゃったんですよ」とお金に困っていることを話すと、「じゃあ、うちの仕事手伝う?」と何の根拠も実態もないことを言ってしまう。

にっちもさっちもいかなくなり「この後輩を殺すしかない」と思い詰めます。そして、10歳以上年下の大学生を殺害して財布から9万円を奪うという強盗殺人を犯し、無期懲役の判決がくだされました。

「自分の人格が否定される」という恐怖心

この男を実際に心理分析したわけではありませんが、類似した多くのケースを見て感じるのは、小さな嘘も「訂正したら嘘つき呼ばわりされるだけでなく、自分の全人格が否定される」という恐怖心を持っているということです。

「ごめん、かっこつけたくて嘘ついちゃった。本当はネットビジネスで失敗して、借金があるんだ」と言えればよかったのに、そんなことをしたら自分が全否定されてしまうように感じている。歪んだ自己顕示欲がその背景にはあるのです。

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要するに、こういう人は自分に自信がありません。仲良くなった相手も、おごってあげたり仕事を紹介してあげたりしないと、その人に好きでいてもらえる自信がないのです。

この例からもわかるように「嘘をついてはいけない」とだけ教えられた子は、遅かれ早かれ苦しむことになるでしょう。「あれは嘘でした、ごめんなさい」と言えることが大事です。間違ったら修正すればいいのです。誰しも間違うことはあるのだし、間違ったからといって人格的な価値が下がるわけではありません。

嘘を告白し、訂正するのには勇気がいります。もし子どもが「嘘でした、ごめんなさい」と言えたらその勇気を褒めていいと思います。

また、大人が嘘をついたとき、適当にごまかせば不信感につながります。「こういう理由で嘘をついてしまいました。ごめんなさい」と伝えたほうがいいのです。

出口 保行 犯罪心理学者

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でぐち やすゆき / Yasuyuki Deguchi

1985年に東京学芸大学大学院教育学研究科発達心理学講座を修了し同年国家公務員上級心理職として法務省に入省。以後全国の少年鑑別所、刑務所、拘置所で犯罪者を心理学的に分析する資質鑑別に従事。心理分析した犯罪者は1万人を超える。2007年法務省法務総合研究所研究部室長研究官を最後に退官し、東京未来大学こども心理学部教授に着任。2013年からは同学部長を務める。内閣府、法務省、警視庁、各都道府県庁、各都道府県警察本部等の主催する講演会における実績多数。現在、フジテレビ「全力!脱力タイムズ」にレギュラー出演しているほか、各局報道・情報番組において犯罪解説等を行っている。

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