「誰とでも仲良く」親の教育が少年に起こした悲劇 周囲を気遣うサッカー少年に起きたまさかの事態

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中学2年生になって、小学校時代から苦手なシンジと同じクラスになりました。シンジは自分の意見を持っていてハッキリものを言うリーダータイプ。同じサッカー部では次期キャプテンと言われています。シンジは何かにつけてワタルにつっかかり、「言いたいことがあるなら言えよ」とけしかけてくるのでした。

「いや、別になにもないよ……」

衝突を避けようとするワタルがかえって気に障るのか、シンジの行動はエスカレート。サッカーのプレイ中にわざと足をひっかけてきたりします。ワタルのストレスはたまる一方で、部活も休みがちになっていきました。

「何か悩みがあるんじゃないか?」

放課後の教室でぼんやりしていたとき、ちょっと不良っぽくてかっこいいミツヤが声をかけてきました。ミツヤは運動会では応援団長をつとめるタイプで、みんなが一目置く存在だ。ワタルははじめて心の内を明かします。

「本当はシンジが嫌いなんだ。でも、親にそんなことは言えないし、誰にも言えなくて」

「なんで親に言えないの?」

「みんなと仲良くできない子はダメなんだって。弟も見てるからって」

「そっか……。オレは嫌いなヤツがいてもいいと思うけど」

ワタルは話を聞いてくれたミツヤになつくようになりました。ミツヤから「今度一緒に万引きしない?」と誘われたときは、悪いことをするというより「ミツヤ君と秘密を共有する」という感覚が強く、躊躇せずに誘いにのったのです。

実はミツヤは万引きの常習犯です。

お金に困っているわけではありませんが、スリルを楽しむためにゲーム感覚で万引きを繰り返していました。最初はひとりでやっていましたが、さらなるスリルを求めて仲間と盗んだものの量を競うようになっていました。

メンバーの中では「盗ったものは売らないよ。量を競争するゲームなんだし。あとで返せばいいんだから」などと非行の正当化もされています。実際、読みもしない雑誌や本を盗んで、ただ家に積んでいるのです。

そしてワタルもミツヤの仲間数人と大型書店で本を万引きし、それが常習化していったのでした。

「みんなと仲良く」のウラにあるもの

ワタルは両親から「みんなと仲良くしなさい」と言われ続けたために、自己主張ができずストレスをためていました。両親は「協調性が大事」という価値観を持っていたようです。この価値観自体は何も悪くありません。

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