「誰とでも仲良く」親の教育が少年に起こした悲劇 周囲を気遣うサッカー少年に起きたまさかの事態

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ただ、すべてにおいて協調性を優先し、ワタルの気持ちを聞かなかったのが良くありませんでした。「みんなと仲良く」=「個性を抑えろ」というメッセージになってしまっていました。ワタルにとって決定的だったのは、「チームでおそろいのユニフォームを作りたい」という希望を親に伝えたとき、「出しゃばるな」と言われたことです。「自分の希望を言ってはいけないのだ」と思うようになってしまいました。

ワタルは一見、みんなと仲良くできており、学校生活に問題はないように見えます。しかし、シンジを嫌い、仲良くしたくないという悩みを抱えています。大人からすれば大したことないように思えるかもしれませんが、本人にとっては大問題です。部活を休みがちになったというのは、ワタルからのSOSです。この頃の様子は確実に違ったはず。

両親がそれに気づいて話を聞いてあげることができればよかったのですが、声をかけたのは万引き癖のあるミツヤでした。はじめて本音を聞いてもらえたことで一気に仲が深まり、あっというまに万引きグループに入ったのです。

周囲の反応をうかがう子は、自己決定力が弱い

「普通の子がなぜそんな非行を」とまわりは驚いたのではないでしょうか。でも、自己主張することを許されずに、周囲の反応をうかがいながら生活している子は、自己決定する力が弱いのです。人に合わせることは得意でも、人を批判的に見ることができないので、「これは悪いことだからやめておこう」という判断もできなかったのです。

みんなと仲良くできるのは理想かもしれません。しかし、大人が子どもに向かって「仲良くしなさい」というとき、そのウラには大人側の都合が隠れていないでしょうか。トラブルが起きたら面倒くさいことになる、だから仲良くしておいてほしい。こういった大人側の都合で言っていることは子どもにもわかります。そして、自分は大事ではないのだと感じます。

子どもだって仲良くしたいと思っているでしょう。でも、そうできない理由があるから困っているのです。仲良くできないなら、どうすればいいのか考えようというスタンスで話を聞くのがいいのです。

今回の事例では、ユニフォームの提案があったときに、まずは話を聞いてあげるべきでした。「どうしてそう思うの?」と考えを聞いたうえで、「お父さんやお母さんは、まわりの人の意見がどうなのかが気になるんだ」「意見がまとまらずにこの話が長引くと、ワタルがサッカーに集中できなくなるんじゃないかと心配してるんだ」というように、親の考えも話せばいいのです。

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