「誰とでも仲良く」親の教育が少年に起こした悲劇 周囲を気遣うサッカー少年に起きたまさかの事態

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しかし、心理的距離が遠ければ相手のことはさほど気になりません。顔を合わせたら挨拶をし、困っている様子があれば声をかける。そのくらいの距離感であればお互いに心地よい関係性になれます。やり取りの中で自然に距離が近くなることはありますが、どちらか一方が急に濃厚な人間関係を求めて距離をつめて親密になろうとしたりすると関係がうまくいかなくなります。

このように、バランスをとることができずにエスカレートしていくご近所トラブルは多いです。「顔を見るのもイヤだ!」とストレスを爆発させるのは、心理的距離が近すぎるのです。

さまざまな人間関係を経験してきた大人は、このバランスをとるのが上手です。相手に合わせるのでなく、かといって相手を変えようとすることもなく、ちょうどいいコミュニケーションをとることができます。

一方、経験の少ない子どもにとっては難しいことです。だからこそ、失敗もしながら経験を増やしていくことが重要です。

ワタルにとって、苦手なシンジとどう付き合っていくかは、良い学びにもなったはずです。これも親が指示をするのではなく、本人が考えることが重要です。「シンジが嫌いだ」という相談があったなら、話をよく聞きながら「どうしてだと思う?」「相手はどう思っていると思う?」というように子どもが自分で考えるためのサポートをすることです。

きれいごと教育の問題点

「みんなと仲良く」のようなきれいごとを押しつけると、必ず問題が出てきます。実際にはできないので、ギャップに苦しむからです。子どもは「みんなと仲良くできない自分はダメだ」と思ってしまいます。「みんなと仲良く」と言っている大人ができていないのだから、不信感にもつながるでしょう。

「嘘をついてはいけない」もそうです。

詐欺のように人を騙して不当に利益を得たり、嘘をついて相手を傷つけたりするようなことはしてはいけません。しかし、誰しも小さな嘘ならついたことがあるはずです。「私は嘘をついたことがない」なんて言ったら、それこそ大嘘ではないでしょうか。

人を傷つけないためにつく嘘もあります。自分を守るためにつく嘘もあります。嘘は全部ダメだと言ってしまえば、実際に嘘をついてしまったときに困ることになります。一度ついた嘘を訂正することができず、嘘を重ねなければなりません。

日本テレビ『ザ!世界仰天ニュース』の中で私がコメントをした事件のひとつに、「見栄を張りたくてついてしまった小さな嘘が…可愛い後輩の命を奪う」(2022年4月19日放送)というものがありました。

次ページ嘘に嘘を重ねた結果…
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