「誰とでも仲良く」親の教育が少年に起こした悲劇 周囲を気遣うサッカー少年に起きたまさかの事態

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最終的には親の考え通り「今回はやめておこうか」となったとしても、ワタルは自分の意見を言ってもいいんだと思えるはずです。

また、シンジと仲良くできない悩みをワタルは親に話すことはできませんでしたが、もし相談してくれたなら、とにかく話を聞くことです。頭ごなしに「仲良くしなさい」なんて言ったら最悪です。「そんなヤツと付き合うのはやめなさい」と言うのも同じようにダメです。親が指示することではないのです。

さらに言うと、「私が話をつけてくる」と相手の親や学校に言いに行くのも解決になりません。子どもに頼まれたならともかく、親が勝手に話を進めれば、子どもは気まずいに決まっています。

心理的距離のとり方を学んでいく

身のまわりにいる人が好きな人ばかりだったらいいのですが、そうでないことだって多いもの。嫌いな人がいるのも普通のことです。

好き嫌いの感情をなくすことはできません。大切なことはそれを認めたうえで、嫌いな人とどう付き合うかです。そのときにカギになるのは「心理的距離のとり方」です。

物理的には近いところに嫌いな人がいても、心理的に距離をとって付き合えばストレスが少なくなります。極端な話、「近くにいても、心は何億光年も先の星」というくらい遠いつもりで、当たり障りなく付き合えばいいわけです。

……と言うのは簡単ですが、実際には非常に難しいのがこの「心理的距離のとり方」です。相手がいるので、こちらがいくら距離をとっても相手がつめてくるかもしれません。すると、それに引っ張られてこちらも近い距離で考えてしまう。結果として、ストレスをためることになります。

以前、ご近所トラブルを起こしていた方の心理分析を担当したときの話です。その方は毎日のように鍋を打ち鳴らして騒音を出し、ゴミをまき散らして住宅街を汚していました。近隣住民からは総スカンをくらい、ますます迷惑行為がひどくなります。

心理分析をすると、実は近所の人と仲良くしたいという気持ちからこじれていたことがわかりました。仲良くしたいと思って話しかけたのが、無視されたとか誤解されたという些細なトラブルになったのがきっかけです。その方は仲良くできないつらさを受け入れられず、迷惑行為として表出させてしまったのです。

その方にしても、トラブルとなったご近所さんにしても、心理的な距離をうまくとることができていれば大きな問題には発展しなかったことでしょう。近所に住んでいるわけですから、もちろん物理的には近く、しばしば顔を合わせることになります。

次ページ心理的距離が遠ければ、相手のことはさほど気にならない
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