2015年に世界文化遺産に登録された軍艦島に関しても、強制連行等について「犠牲者を記憶にとどめるために適切な対応を取る」と日本政府が国際的に約束している。
しかしそれにもかかわらず、その約束が守られなかったことから、ユネスコから日本政府に遺憾決議が出されて、「合意を履行するように」という批判があったのである。
また、元徴用工への慰謝料の支払い問題については、1965年の日韓基本条約での曖昧な合意が根底にある。日韓基本条約では、植民地支配の合法性・違法性に関して、日韓の間で合意はなく、棚上げされたのをご存じだろうか。
その結果、「合法論」に依拠する日本政府の立場では、元徴用工に支払われたのは「未払い賃金」であり、併合は合法なので「慰謝料は不要」ということになった。
しかし、「違法論」に依拠する韓国政府の立場では、未払い賃金は払われたが、慰謝料は払われていないという理解である。
「正当性」と「合法性」は違う問題
しかも韓国では、この日韓基本条約が結ばれたとき、民意を代表しない軍事独裁政権が、国民の反対を押し切ってこの問題を棚上げにしたのだった。
日韓併合の実態や経緯に関する学術的証拠に関しては、長くなるので詳細は新刊『そっか、日本と韓国って、そういう国だったのか。』に譲ることにする。
ただし考えてみていただきたいのは、イギリスが清国に仕掛けたアヘン戦争も、侵略した側にとってみれば「合法」だった。
アメリカによるイラク侵攻も、ロシアによるウクライナ侵攻も、やっている側としては「合法」という主張である。
「正義」と「合法」、そして「正当性」と「合法性」は、また違う問題なのである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら