「食事をしているとき、子ども(双子)が笑いながら全部ご飯を床に落とすわけです。遊びながら食べる時期があるんですね。それにうちの床はじゅうたんで、しかもよりにもよって薄い色のじゅうたんだからシミが目立つの。ミートソースなんかを落とされたら、もうまるで現代アート(笑)。
でも、そのうち気にしなくなるんですね。こぼれるのが牛乳ぐらいだったら、かまわず放置。そんな状況が続いていたある日、子どもにご飯をよそおうとしたとき、『熱っちー!!』ってなったんですよ」
育児と激務で疲労もピークに達していた伊藤さん。またもワラをもつかむ思いだったのだろうが、その手につかんだのは、なんと炊飯器に入れっぱなしになっていたことで極限まで加熱されたしゃもじだった。
編集長から“変集長”へ
「そのとき、咄嗟に思ったんです。しゃもじって、可愛いのがないよなぁと。疲れ果てた生活 を送っていても、かわいいしゃもじがあったら、1ミリくらい気が晴れるんじゃないかと。だったら、ゼクシィでかわいいしゃもじ、できれば立てて置けるしゃもじを付録にしたいと思いついたのです」
かくして、北欧のブランドHELMIとコラボした付録「かわいすぎる・立てて置けるしゃもじ」が誕生した。これが伊藤さんにとって「ユーモア」に目覚め、ブレイクスルーを実感する瞬間だったのだ。
「あのとき子どもがミートソースを落としたりしなかったら、しゃもじに夢を求めることもなかったと思うんですよね(笑)。でも、付録といえば今まではポーチのようなものが多かったので、社内でしゃもじの話しをしたら、育休明けで伊藤はちょっとおかしくなったんじゃないかと、それはもう『変人扱い』でした」
しかし現在、ゼクシイの破天荒とも言える企画や付録は、決して伊藤さん1人によって生み出されているのではない。「自分自身で企画をひねり出すと言うよりは、組織全体で。メンバーは、私が考えたこともないようなアイデアをどんどん出してくれます。今後も世界でいちばん面白い編集部にしたいと思っています」
いったい“保守派”だった社内に何が起こったというのだろう。いかにして、ゼクシィ編集部にぶっ飛んだ発想と行動が許容される土壌が築かれたのか。
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