アフリカの人口は、13.2億人で、世界人口の約17%を占めます。こうした巨大な人口を抱えるアフリカは、かなり前から「アジアに続く世界の成長センター」と言われてきましたが、実際には、いまだに成長軌道に乗れていません。
本来、人口規模は国力の源であり、人口増加は「理論上」、労働力増加を通じて、経済成長に貢献します。巨大な人口を抱える中国では1990年以降、増加した労働力がまず繊維産業など軽工業に吸収されました。さらに自動車などのより生産性の高い製造業に移動することで、労働者の賃金が大幅に上昇しました。
これが巨大な消費市場を担う中間所得層を形成し、経済の好循環を生み出しました。ここで重要なことは、単純に「人口増加=経済成長」ではないということです。経済成長の実現には、増加する労働力を雇用する産業、特に、生産性の高い製造業が不可欠です。労働力が増えても、雇用する産業がなければ、失業者が増え、経済成長どころか、治安悪化等につながってしまいます。
デジタル化より製造業の誘致・育成が先決
残念ながら、アフリカの多くの国では、インフラ未整備などの問題から海外からの投資が伸び悩み、特に、製造業がなかなか立ち上がってきません。アフリカはこれまでの経済発展段階を飛び越え、一気にデジタル化などが進むとの見方もあります。
しかし、現段階のアフリカ諸国に必要なのは、人口増加というメリットを最大限に生かせる付加価値の高い「製造業」の誘致・育成と、それによって実現する雇用拡大を通じた所得の増加です。
一部のアフリカ諸国では、先進国にも負けない技術力をもったベンチャー企業もありますが、こうした分野だけでは巨大な労働力を吸収することはできません。こうした状況の中で、日本が優先する「グリーン投資」や「スタートアップ支援」は、あまりにも先に行き過ぎたもので、十分な効果が得られないのではないかと危惧しています。
AU(アフリカ連合)の議長国を務めるセネガルのサル大統領は、TICAD開会式の演説で「重要なのは食料問題での自立であり、農業生産力や輸送能力の向上などが必要」と訴えました。
これがアフリカ側の本音だとすると、製造業はもとより、そのさらに前の段階としての「農業分野のテコ入れ」が最も優先されるべき支援分野となります。先進国目線ではなく、アフリカ諸国が最も求めていることは何なのかを再確認すべき時期にきているのではないかと思います。
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