西アフリカで人気沸騰中の「GEISHA」缶の正体 輸出魚優等生のサバに異変が起きている

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ガーナの商店の様子。ここでもサバ缶「GEISHA」が販売されている(写真:川商フーズ)

2019年の農林水産物・食品の輸出額(速報値)が明らかになった。政府は2019年に輸出額1兆円を目標に掲げていたが、結果は9121億円(前年比0.6%増)にとどまり目標達成とはならなかった。

水産物の不漁や日韓関係悪化を受けての韓国内での日本製品不買運動が響いた。輸出額は7年連続で過去最高を更新したものの、伸び率は大きく鈍化した。ちなみに輸入額は9兆5166億円(前年比1.6%減)。圧倒的な輸入超過である。さて、今回は近年、国内で大ブームとなっているサバをめぐる状況を取り上げてみたい。

輸出・輸入ともに取引がさかん

サバは日本人の食卓に欠かせない魚。この数年は、健康志向の高まりやテレビ番組での紹介もあり一大ブームが続いている。人気の中心・サバ缶はツナ缶を抜いて3年連続で生産量トップとなっている(4万9349トン=2018年 日本缶詰びん詰レトルト食品協会の生産統計)。

ユニークなのは、サバは輸入、輸出それぞれで巨額の取り引きがあることだ。2019年のデータでみると、輸入は約170億円で前年比6.4%増。輸入元は①ノルウェー②アイルランド③イギリスの順。ノルウェーが87%を占め圧倒的だ。スーパーで見かける大ぶりで脂ののった塩サバはノルウェー産の大西洋サバが多い。

一方、輸出は約206億円と輸入よりも3割近く多い。輸出先の上位は①ナイジェリア②ベトナム③タイの順。ナイジェリア向けは58億5949万円でシェアは28%。トップ10にはガーナやエジプトといったアフリカの国が顔を出している。

ここで1つの疑問が生じる。200億円以上も輸出するほどの生産量があるのに、なぜ170億円もの輸入が必要なのか。日本近海で水揚げしたサバを国内消費に回せばそれで足りるのではないか?

そのヒミツのカギはノルウェー産にある。1980年代、日本国内では乱獲でサバが不足し、急遽、ノルウェーからの輸入で補った。ノルウェーではサバの漁期が9月から10月の脂が最ものって高値で売れる時期に集中。日本での評価が高く、例年輸入トップシェアを維持している。

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