西アフリカで人気沸騰中の「GEISHA」缶の正体 輸出魚優等生のサバに異変が起きている

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一方、日本産はというと資源量は回復傾向にあるものの、水揚げされるのは小ぶりなものが多く、脂ののりもノルウェー産にかなわない。当然、取引値も安く2018年の1キログラム当たりの値段は96円だった。ちなみに、まぐろ(生)は1620円。大衆魚と言われるゆえんである。

そのため関サバ、金華サバなど一部のブランドサバは別格として、全国の漁港で水揚げされたサバの多くは缶詰や養殖用の餌、そしてアフリカ諸国などへの輸出に回されるという構図となっているのである。

西アフリカで重宝されるサバ「国民食の缶詰」も

前述のとおり、サバの輸出先でシェアトップを占めるのはナイジェリアだ。2位のベトナムや3位のタイは現地の工場での缶詰製造が大半で、近年は冷凍の小型サバがナイジェリア、ガーナ、エジプトなどアフリカ諸国に食用として輸出されるケースが増えている。アフリカ諸国向けがサバ輸出の約5割を占めている。

西アフリカのガーナ・アクラでの販売風景(写真:川商フーズ)

ナイジェリアでは大型で価格の高いノルウェー産に比べ、小型で価格の安い日本産が重要なたんぱく源として重宝な存在となっている。船便で送られ、ナイジェリアやガーナなど西アフリカの港に荷揚げされた後、現地での消費のほかに内陸部の他国へもトラックで再輸出されている。

ナイジェリアやガーナではサバは焼き魚やトマトシチューなどで食べられているという。日本の漁港で水揚げされた小さなサバが冷凍され船で西アフリカまで運ばれ、現地の人々の食卓にあがっているのだ。

さて、「サバと西アフリカ」というと現地で「国民食」とまで呼ばれている大ヒット商品がある。日本の食品商社・川商フーズが扱っている「GEISHA(ゲイシャ)」というサバのトマト煮缶詰だ。ナイジェリアやガーナではゲイシャといえばサバ缶をさすほどのブランド力を誇っている。

その歴史は古い。川商フーズの前身・旧野崎産業が1911年にアメリカで浸透している「GEISHA」を商標登録(翌年正式登録)。戦後、「GEISHA」ブランドで輸出を再開した。終戦直後の1950年代、ロンドン支店の駐在員がガーナに行く機会があり、現地の沿岸部では魚を食べる習慣があることからサバのトマト煮缶詰をリュックに入れて訪れ、売り歩いた。

当時のガーナには缶詰がなく、「GEISHA」が同国の缶詰第一号となり、大人気商品となった。その後、同じ英語圏(公用語)のナイジェリアにも広まったという。60年以上の歴史があるのだ。

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