二つ目は「中国への対抗意識の過度の強まり」です。TICADはアフリカ諸国の経済発展支援とともに、多くの国連加盟国を抱えるアフリカとの友好関係を強める目的がありますので、日本が中国のアフリカでの影響力拡大に対抗意識を持つのは当然です。
今回のTICADでも、中国を念頭に「不公正・不透明な開発金融の排除」や「民主主義の定着及び法の支配の推進」「開かれたインド太平洋戦略への協力」などが大きな論点となりました。これらは、日頃から日本政府が主張しているもので、内容自体に違和感はありませんが、過去のTICADでは、ここまでむき出しの形で中国への対抗意識を出していませんでした。
支援規模も同様です。2019年に開催された第7回TICADにおいて、日本は、200億ドルの支援を表明しましたが、中国は、2021年に開催した中国・アフリカ協力フォーラムで400億ドルの支援を打ち出しました。
今回、岸田首相が表明した300億ドルという支援額は、この中国の支援額を意識したもので、足りない分を「人への投資」といった「日本らしさ」でカバーしたと説明されています。日中双方が提示する金額が、本当にアフリカ側が必要としているものなのか、また、「日本らしさ」という独りよがりとも見えかねない支援に、本当に効果が期待できるのか、懸念はぬぐい切れません。
支援効果より意地の張り合い?
日本と中国が争いながらも、その支援規模や内容が、本当にアフリカ諸国の発展に貢献できればよいですが、実際の支援の効果は二の次で、金額の多さや、その国らしさといった曖昧な支援合戦のような「意地の張り合い」が強まりすぎて、本来の主旨がないがしろにされてしまうことがないよう、つねに留意しておく必要があると思います。
日本の対アフリカ投資残高(2020年)はわずか48億ドルで、首位の英国(650億ドル)はもとより、中国(430億ドル)にも大きく水をあけられています。
TICAD開催のたびに、アフリカを「人口が多く、潜在成長力が高い有望地域」「アジアに続く世界の成長センター」「最後のフロンティア」などと持ち上げ、都度、見栄えの良い「支援」が打ち出されていますが、本来、評価されるべき「長期にわたる継続的支援」が「惰性」につながってしまっていないか注意が必要です。
巨額の資金投入に対する国民の理解を得るためにも、お題目的な美辞麗句はいったん棚上げして、なぜアフリカ諸国がいまだに成長軌道に乗り切れないのか、日本の支援はアフリカ諸国のニーズに合致し、経済発展に貢献できているのか、中国への対抗意識が強すぎて本来の主旨を忘れてはいないか、といった点を、冷静に再確認すべき時ではないかと思います。
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