今さら聞けない「代替肉」と「培養肉」注目のワケ 欧米を中心に若者が肉を食べなくなっている

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昔からあるにもかかわらず、こんなにも名だたる投資家から注目されている理由は、やはり世界的な食料問題と気候変動です。

世界の食肉需要に対応すべく従来の食肉生産を拡大することは、温室効果ガス排出量の面からも土地利用の面からもむずかしく、近い将来世界的なタンパク質不足に陥る可能性が高い状況です。

技術革新が続く「培養肉」

そこで、環境に優しい効率的なタンパク質生産技術として注目されているのが、バイオテクノロジーにより牛や鶏、魚などの筋肉細胞を人工的に培養する「培養肉」です。細胞農業技術を活用して栽培された培養肉は、環境負荷が小さいとして次世代の食材と期待されています。

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細胞農業とは、従来のように動物を飼育・植物を育成することなく、生物を構成している細胞をその生物の体外で培養することによって行われる新しい生産の考え方です。細胞農業で生産が可能なものは、牛肉や豚肉、魚肉などの代替タンパク質だけではなく、農作物、毛皮や革、木材なども理論的には培養可能です。

培養肉は、2013年にオランダのマーストリヒト大学教授のマーク・ポスト医学博士により開発されました。2013年当初は200gの製造に3000万円前後かかっていた培養費用が、5年間で100g当り数万円となるまで技術開発が進んでいます。

気候変動と人口爆発を背景に、食肉の生産地が、牧場から培養液が入ったシャーレに変わろうとしています。近い将来、神戸牛や松阪牛と並んで、培養肉が選択肢の1つとなるかもしれません。

齊藤 三希子 スマートアグリ・リレーションズ 社長執行役員

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さいとう みきこ / Mikiko Saitou

早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了、大学院で環境経済学を学ぶ。外資系総合コンサルティングファームのディレクター職を経て現職。地域資源を活用した持続可能な地域モデルの創出や、Agri-Food Tech、カーボンニュートラル、バイオエコノミー、食料安全保障などの事業創出に多数従事。主な著書に、『カーボンニュートラル2050アウトルック』『カーボンZERO気候変動経営』『〈培養肉、植物肉、昆虫食、藻類など〉代替タンパク質の現状と社会実装へ向けた取り組み』(共著)など。

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