では、ここで王将と比較してみましょう。王将は年間524億円の販管費を使っており、1店舗あたりの月間販管費は約841万円です。王将は、403人を下回ると店舗単位で赤字になるとわかります。つまり、日高屋のほうが損益分岐点に達する客数が低いのです。
固定費が少なく、損益分岐点も低いので、日高屋のほうが店舗効率がいいということがわかります。
つまり、収益力は王将のほうが高い一方、日高屋はコストを下げているので高い利益率を実現しているのです。客数や客単価のみからの情報では、日高屋の強みを読み取れません。
このように、非常に強力なビジネスモデルを構築していることが、日高屋の高い利益率の源泉となっていました。損益分岐点の低さから、集客さえできれば高収益を維持し続けることができていたのです。
なぜビジネスモデルが崩れてしまったのか?
ところが、コロナ禍の影響で両社の間に差が出ました。強力な集客力を持っていた「駅前」という立地が、巣ごもり生活や在宅勤務の影響で機能しなくなり、ビジネスモデルが機能する前提条件が、環境の変化によって変わってしまったのです。
広告をかけずに集客できるはずだった駅前の店舗が、人出が少なくなったことにより、集客力がなくなります。つまり、日高屋の製造・物流・販売の一貫したサプライチェーンの販売の部分が機能しなくなり、その結果、日高屋は思うようにお客さんを獲得することができず、一気に赤字に陥ってしまったという状態です。
では、王将はなぜ黒字を維持できたのかというと、そのビジネスモデルが「コロナ禍においても有利に働いた」のが最大の理由です。
王将フードサービスの売上高と営業利益率の推移を見てみると、コロナ禍でもきちんと利益が出ています。王将の特徴は、「店の中のみならず、店の外でもいかに売るのかまでを考えて経営している」ことでしょう。
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