まず1つめが、「タテ社会」という構造です。「タテ社会」とは、社会人類学者の中根千枝さんが著書『タテ社会の人間関係』(講談社)の中で提起した概念です。
人間関係をその結びつきの形式によって分けると「タテ」と「ヨコ」の関係があります。
日本の場合、「場」による社会集団である「家」「会社」「学校」などでは、それぞれ「親・子」「上司・部下」「先輩・後輩」といった、上下の序列の差がきわめて重要な機能を持つ「タテ社会」であると中根さんは看破されました。
「タテ社会」の日本企業では、「昇進」「出世」が重要だった
また、「タテ社会」である日本企業では、序列を上がる「昇進」や「出世」が大きな意味を持ちます。「組織内タテ流動」であり、人材育成についても、上から下へ伝授されます。
日本企業の場合、昇進しても「給与」や「賞与」で大きな差がつくわけではありません。ただし、昇給差はわずかでも、昇進に遅れるのは、マラソンでいえば、第1集団から第2集団に落ちて、二度と第1集団に戻れないことを意味します。
最終的に第1集団に与えられる「社会的栄誉」と「実質的な生涯賃金」は、第2集団、第3集団とは大きな差が生じます。
そのため、上昇志向の強い弱いにかかわらず、社員にとって、出世ができない状態は「惨め」だという感覚が、日本の企業には根づいてきたのです。
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