もう1つは「安心社会」という構造です。「安心社会」というのは、社会心理学の権威で北海道大学大学院教授を務められ、その功績から文化功労者に選ばれた山岸俊男さんが提起した概念です。
「会社に所属=安心を保証してくれる社会」は終わった
「安心社会」とは、「閉鎖的な集団主義社会」で、その中に所属していれば社会のシステムが安心を保証してくれる社会です。
外の世界での社交の必要性も低く、「終身雇用」や「年功序列」といった日本式経営を続けてきた企業は、まさに「安心社会」でした。
成員の組織に対する求心力は、「組織とのポジティブな一体感」からではなく、「安心感を与えてくれる安定した組織から放り出されては生きていけない」というネガティブな認識から生まれます。
会社の掲げるビジョンやミッションがとくに腹落ちしなくても、所属が安心感のベースになるので求心力が保たれる。それが「安心社会」としての日本企業の特徴でした。
「安心社会」では「人間関係感知能力」が求められます。自分が属している集団の内部で誰が最も力を持っているか、誰と誰の仲がよくて、誰と誰の仲が悪いのか、自分はまわりからどう思われているか、誰と付き合うことが最も安心をもたらしてくれるか……などの関係性を感知する能力です。
そのため、「たえざる人間接触」が必要となり、内部でも顔と顔を合わせる長時間のコンタクトを重視して、出張や会議が多くなり、その結果、生産性が低下します。
このような「安心社会」という閉ざされた世界から「新しい価値」を生み出すことへの限界を迎えつつあります。
いわゆる「社内政治」に必死になっているような社員はその価値を失い、駆逐されてしまうかもしれません。
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